Apple、念願の自前通信チップ 25年のiPhone SEから
このころのアップルには、iPhoneやMac向けに設計したSoCの成功を再現できるという確信があった。ただ、通信半導体は開発が非常に難しく、クアルコムや台湾聯発科技(メディアテック)、韓国サムスン電子といった数社しか製造できないといわれる。 ■ クアルコムとの法廷闘争・和解、インテル通信半導体事業買収 一方、クアルコムとアップルは、特許使用料を巡り長期にわたる法廷闘争を繰り広げ、2019年に和解した経緯がある。このとき2社は長期の特許ライセンス契約と供給契約を結んだ。しかし、この年、アップルはインテルのスマホ向け通信半導体事業を10億ドル(当時の為替レートで約1100億円)で買収し、約2200人の従業員と特許資産を得た。それ以降、アップルはクアルコム依存からの脱却を目指してきた。 アップルは当初、「iPhone 15」に自社開発モデムを搭載する計画だった。だが、2022年末に行った動作試験で、速度が遅すぎることや過熱しやすいことなどが判明した。その回路基板は、iPhoneの半分を占有してしまうほど大きく、使えるものではなかった。 ■ クアルコムとの調達契約、26年まで延長 そこで、アップルは2023年、同年が期限だったクアルコムとのモデム調達契約を3年延長した。その新たな期限が2026年である。すなわち、アップル製の第2世代モデムが完成し、iPhone 18に搭載する準備がと整うと同社が見込む年である。 ブルームバーグ通信によれば、アップルの第3世代モデムは「Prometheus(プロメテウス)」というコードネームで呼ばれている。前述した通り2027年の完成を目指している。アップルは、この部品のパフォーマンスとAI(人工知能)機能でクアルコムの技術を追い抜きたいと考えている。次世代衛星ネットワークをサポートする機能も組み込む予定だ。
小久保 重信