プロ野球選手引退→スカウト転身、激変した生活リズム 大嫌いだったスーツを毎日着用
スカウトといえども球団職員の1人…人事は「会社が決めること」
スカウトというと、特殊な職業のようにも思えてしまうが、その実情は営業マンのように、地道な作業の積み重ねだった。 選手時代とはまったく異なる境遇となったが、中でも戸惑ったのがスケジューリングだったという。選手時代は、遠征先への移動や宿泊先などはマネジャーが準備してくれていた。しかし、今ではすべてを自分自身で管理する必要がある。 「選手時代は自分のことをやっていれば良かったので、戸惑いましたね。特にスカウトは移動も多いですし、相手あってこそ初めて仕事ができる職業です。学校や企業さんに連絡して、自分の予定と照らし合わせて、レンタカー予約して、電車の時刻を調べて、ホテルはここを取って……とか、そんなことばかりやっています(笑)」 スカウト生活も2年目に入り、徐々に新たな生活リズムにも慣れてきた。「スケジュールを組むのが上手になりました」とニヤリと笑う。 昨年との大きな違いは初めての担当選手が活躍しているという点だ。ドラ1左腕・武内夏暉は1軍でローテーションを守り、新人ながら9月16日には完封勝利を果たすなど、新人王の有力候補。「自分の仕事をしながらも、武内の1軍での活躍を見られることが何よりもうれしいし、やりがいです」と“我が子”の成長を見届けている。 スカウトといえども球団職員の1人。今後、どういう人事が待っているかは神のみぞ知る。「今はやりがいを感じていますし、長くやれればいいですね。あとは会社が決めることなので、僕は自分の仕事を全うするだけです」。 仕事着をユニホームから大嫌いだったはずのスーツに変えて、お世話になった球団のために十亀氏は今日も汗を流し続ける。
中村彰洋