「和=枯山水」? 日本オリジナルの自動車デザインとは何か
日本人による日本のデザイン
ローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏が退任し、日本人の前田育男氏がデザインを統括するようになると、マツダは、日本人でも認められるリアリティの高い日本のデザインを本気で模索し始めるのだ。それは後にデザインコンセプトカー「SHINARI」に結実するのだが、そのためにマツダは敢えて遠回りをした。日本古来のデザインとは何かを知るために、日本の伝統工芸を研究し始めたのである。正直、「そこから始めるのか……」と思う。なんと大変な道を選ぶ人たちなのだろうか。 伝統工芸の研究は昨今始まったことではなく、長年にわたってそういう努力が積み重ねられてきたのだと思う。そうでなければタイミング的に「魂動」デザインと伝統工芸の間には何ら関係性がないことになるからだ。マツダの言う「第6世代デザイン」がロードスターでほぼ完結を見たことで、そういう「和」デザインとの象徴的なコラボレーションをひとつの集大成としてデモンストレーションしていく気になったらしい。それが玉川堂(ぎょくせんどう)とのコラボレーション企画なのだ。
玉川堂とは知る人ぞ知る鎚起銅器(ついきどうき)の老舗だ。200年続く無形文化財でもある。一枚の銅板から槌を使って日常銅器を打ち出して作る日常銅器のメーカーだ。職人が一週間かけて作る、一つ35万円のやかんが、飛ぶ様に売れて製造が間に合わないそうだ。マツダによれば「金属を加工して造形する」という意味で両社は通底する部分が多いと言う。 しかし、果たしてそのコラボレーションでいったい何をどうしようと言うのか? マツダの話はいつもよく分からないが、少なくともその裏側で行われていた自動車のデザイン改革は驚くべきものであった。それは次回お伝えしようと思う。 (池田直渡・モータージャーナル) ・【後編】機能が形を生む「和デザイン」 階級社会の欧州とは真逆の手法