【6兆円の血税投入という衝撃】政府はガソリン補助金をいつまで続けるつもりなのか?補助金投入で失う産業競争力、脱炭素との逆行も
かつて途上国を旅すれば、物価を安く感じた。もちろん外国人用のレストランなど別体系の料金も多くあるが、タクシー料金、街中で買うミネラルウォーターなど、多くのもの、サービスの価格を安く感じた。 今日本に来ている外国人は、かつて私たちが途上国で感じた物価の安さを実感しているに違いない。昨年米国出張時にシカゴの電車の駅で購入したミネラルウォーターは5ドルを超えていた。日本はミネラルウォーターが1ドル以下で買え、10ドル以下でファストフードではなく、レストランのランチが食べられる国なのだ。そう日本は物価では途上国並になってきたのだ。 失われた30年間収入と需要は伸びず、規制改革などにより供給は減らなかったのでデフレになった。最近の円安により輸入品の価格は上昇しているが、その典型はガソリン価格だ。 ガソリンの価格を構成する要素は原油価格以外もあるが、原油の価格が大きく影響している。販売価格の内4割程度が原油のコストだが、21年の半ばから円安傾向になり、2022年年初から為替の影響だけで3割程度輸入価格が上昇している(図-1)。ガソリン価格に円安が与えた影響はリットル(L)当たり20円近い。 政府は、ガソリンを含む燃料油に対して激変緩和措置として22年1月から補助金の支出を続けている(「日本のガソリン価格は世界に比べて高いのか安いのか?」)。 ロシアが引き起こしたエネルギー価格上昇、インフレに対処するため、欧州主要国も22年にガソリン、ディーゼル価格への補助を行ったが、短期間で終わった。 なぜ日本だけが2年以上も補助金を続けているのだろうか。軽油、灯油、重油も補助金対象に含まれており、物流業界、宿泊業界、介護業界など幅広い産業が支援を受けている実態がある。脱炭素に向かう中、燃料への補助金を通し家庭と産業を支援するやり方は正しいのだろうか。
まだ続く燃料油価格激変緩和措置
激変緩和措置は、22年1月27日から基準価格をガソリン1L当たり170円、補助上限額を5円とする制度で始まった。コロナからの経済回復の重荷になる事態を防ぐため、時限的・緊急避難的な措置とされ、対象はガソリン、軽油、灯油、重油だった。 当初の計画では3月末までの2カ月間で終了する事業だったが、その後見直しと共に何度か延長され現在も続いている。対象も航空用燃料まで拡大された。 現在の制度では、基準価格168円、ガソリン価格の超過分が17円を超えると(価格が185円超)全額補助、17円までは補助率5分の3となっている。補助は元売りを通して行われ、今年4月11日から17日までの支給単価は1L当たり28.7円だった。 価格の抑制効果は、ガソリンで23.7円だ。事業は今年4月末で終了の予定だったが、延長が決まっている。 欧州連合(EU)主要国もエネルギー価格が大きく上昇した22年に、補助金あるいはガソリンにかかる税の引き下げにより支援したが、3カ月から9カ月の期間のみ実施し22年末までに支援制度を終了した。英国は、しばしば変更するガソリンへの物品税を22年3月に1L当たり0.5795ポンド(112円)から0.5295ポンド(102円)に引き下げ現在も維持している。