国立大学で若手研究者が減少、研究機関は「民間への就職の流れが必要」
国立大学の教員に占める若手の人数が減っている。20年前と比較して40歳未満の教員は5000人以上減少した。在籍者も任期付きの雇用に集中している。研究者の入り口である博士課程に進む学生もこの10年間で2000人以上減少した。一方、教員の中で人件費がかさむ60歳代以上の割合は増加し、大学教員の平均年齢も上昇している。20年前は40歳代前半だったが、今では40歳代後半だ。 なぜこんなに若手が減ってしまったのか? データからは高年齢層の教員が、任期なしのポジションを固めている一方、短期的な財源を元に雇用される若者の姿が浮かび上がってくる。
2011年から2015年で研究環境の悪化訴える声が増加
文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)が今年3月にまとめた「科学技術の状況に係る総合的意識調査(NISTEP 定点調査)」(2011年~15年の定点調査、第一線級の研究者約1500人が対象)によると、2011年から15年の間で、「研究開発にかかる基盤的な経費が十分でない」「望ましい能力を持った人材が博士課程後期を目指していない」との認識が急激に増している。 大学の若手研究者の状況についても不十分との認識が一貫して示され、「任期期限の延長の要件が厳しい」「評価に有利に働く研究テーマを選択するため独創性が減少」「若手研究者のモチベーションが低下している」などの意見が上がっている。
NISTEPが2015年3月に発表した「大学教員の雇用状況に関する調査」では、東京大学や筑波大学など規模の大きい11の大学について、任期無し教員は、2007年度では 19304 人だったのが、2013年度では 17876 人に減少。任期付き教員は7214人から11515 人にと大幅に増えていた。 任期付き教員の多くは20歳代~30歳代が占めていた。また、2007年度と2013年度を比較すると40歳~44歳は、任期無しの教員が減っている一方で任期付きの教員が1000人以上増えており、40歳代になっても、任期付きのままでいる教員が増えていることが浮き彫りになった。研究職に就こうと思っても任期制の職が多く、任期なしのポスト獲得が困難な状況が見て取れる。 任期なしの職で60歳代以上が増えているのも見て取れる。任期なしのポストは全て、国が人件費などとして交付する「運営費交付金」などの基盤的経費から出されているのに対し、若手が集中している任期付きのポジションの財源は短期的な資金として外部から獲得する「競争的資金」などに頼っている。短期的な資金を拠り所とした待遇のため、若手研究者は数年ごとに新たな職を探さなければならない。