【専門家解説】高齢者のお風呂・入浴介助で気を付けたい注意点や対策方法は?
高齢者の介護をしている方、またはご自身が高齢者である方は日々の生活の中で事故やケガが起きないよう細心の注意を払って過ごされていると思います。高齢者の事故やケガが起きやすい場所はさまざまですが、特に浴室は多くの危険が潜んでいます。そこで高齢者が入浴する際に起こりやすい事故や注意点について介護福祉士の尾崎さんに聞きました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
高齢者の入浴時に想定されるアクシデントは?
編集部: 高齢者の入浴時によく起きる事故にはどんなものがありますか? 尾﨑さん: よく起こる事故は転倒です。浴室は床が濡れているので足を滑らせてしまったり、浴槽から出る際足が引っ掛かってしまったりすることで、転倒する可能性があります。 編集部: 転倒以外にも起こり得る事故はありますか? 尾﨑さん: ほかには冬の時期に起こりやすい「ヒートショック」が挙げられます。温度差のある場所から場所へ移動すると、血圧が急に上がったり下がったりしてしまい、身体がダメージを受けることをヒートショックといいます。これにより心筋梗塞などを発症してしまう可能性があります。冬場は暖かい部屋から寒い脱衣場に移動し寒さを感じることで血圧が急上昇し、熱い湯に入ることにより急上昇した血圧が今度は急降下します。この血圧の急激な高低差によってヒートショックを起こしてしまう事故が増えています。 編集部: 危険の多い入浴時のみ注意すればよいですか? 尾﨑さん: 入浴後も注意が必要です。高齢者は脱水症を起こしやすいので必ず水分補給をする必要があります。脱水症になると血管性の疾患を発症しやすくなり、最悪の場合は命を落とすこともあるので注意しましょう。また肌の乾燥で痒みや肌荒れが起きるので保湿をしてください。乾燥がひどくなると強い痒みを感じるようになる可能性もあります。
事前にアクシデントを予防する! 高齢者の入浴の工夫
編集部: 入浴時によく起きる事故として転倒があるといわれましたが、どのような対策をすればよいでしょうか? 尾﨑さん: 脱衣場や浴室内に手すりを設置すると、掴まることによって体が安定するので転倒リスクを減らすことができます。また床が滑らないようにすのこを敷く、浴槽にベンチのような台を設置するなどの方法があります。これらは一人ひとりに合ったものを設置する必要があります。要支援・要介護認定を受けている場合は介護保険を利用し、福祉用具を活用するとよいでしょう。 編集部: 福祉用具にはどんなものがありますか? 尾﨑さん: 前述した物のほかには、背もたれやひじ掛けのついたシャワーチェアがあります。また湯船に入ると滑る可能性がありますが、滑らないよう湯船の中に入れる椅子があります。これは浴槽台と言って、湯船から出る際に踏み台としても活用できます。 編集部: 福祉用具の申請方法を教えてください。 尾﨑さん: 福祉用具を利用したい場合、要支援・要介護認定を受けている必要があります。まずケアマネジャーに相談し、どんな福祉用具が必要なのかをまとめた計画書を作成してもらいましょう。購入費用は市町村で定められた業者から購入した場合、1割(所得の多い方は2~3割)負担で済みます。市町村によって申請方法や業者の指定など変わりますので、お住まいの市町村の手続き内容を調べてから申請するようにしてください。 編集部: ヒートショックを予防するにはどうすればよいですか? 尾﨑さん: 脱衣場や浴室をヒーターや浴室暖房で温め、なるべく室内の温度と浴室の温度に差が出ないようにしましょう。また長時間湯に浸からないようにしたり、肩までしっかり入らず心臓への負担を軽減したりするなどの対策があります。 編集部: 公衆浴場が好きな方も多いですが、その場合どんな対策をすればよいでしょうか? 尾﨑さん: 湯に浸かる前にはしっかりかけ湯を行い、身体を温めるようにしましょう。また熱めに設定されている浴槽にはなるべく入らないようにしてください。また、ほかの人が流した泡に足を取られないよう注意する、なるべく高齢者の方1人では入らない、などの対策を行いましょう。