こども支える拠点 来春、里親支援センターを開設(日本児童育成園、岐阜市)
岐阜市の社会福祉法人日本児童育成園は現在、来年度の里親支援センターの開設に向けて準備を進めている。これまで児童養護施設や乳児院などを運営してきた同法人は2023年に母子生活支援施設を別法人から吸収。さまざまな機能をそろえ、こどもを支える地域の総合拠点を目指している。 ■法改正で誕生 里親支援センターは里親のマッチングや研修、サロンなどを行う機関。今年4月施行の改正児童福祉法で児童福祉施設と位置付けられ、費用は国の措置費から出る。 岐阜県内には現在、児童家庭支援センター(児家セン)が5カ所ある。これらを運営する社会福祉法人はすでに県の委託を受けて里親支援をしており、引き続き4法人が今後も里親支援センターを担うという。 現在、育成園の児家セン「はこぶね」では、20年以上在籍している山田暁美センター長をトップに、正職員2人とパート1人という体制で里親92世帯を支援している。また、県内すべての里親を対象にした研修も実施する。 来年度から建物は同じだが、児家センから里親支援センターが組織上分かれる形になるという。運営の予算も現在の3000万円から大幅な増加が見込まれている。 はこぶねの山田センター長は「体制強化は地域にとっても大きい。引き続き24時間体制で子育て家庭に対応する児家センとも連携する」と話す。 ■里親ショートに力 今後、法人が里親支援センターで力を入れるのが育児不安などの理由で一時的にこどもを受け入れる「里親ショートステイ」だ。 岐阜県内には乳児院が2カ所しかなく、常に定員がいっぱいなのが現状。そのため、はこぶねが受け入れを希望する里親をマッチングし、受け入れ中も里親をサポートする。 里親支援センターの立ち上げを担当しているのは、はこぶねで10年以上ソーシャルワーカーとして働く川嶋久美子さん。大学卒業後に育成園の児童養護施設に勤務した経験もある。 川嶋さんは「はこぶねは里親の研修が義務化された09年から、県内の新規里親登録者に対する研修をしてきたため、登録里親全員の顔が分かるのが強み」と胸を張る。 また里親ショートは里親に登録したものの、正式な委託を受けていない希望者が経験を積めるという効果もある。「最初から長期で委託を受けるのはハードルが高い。短期間でも受け入れると大きな自信になる」と言う。 岐阜県もこれを後押しする。ショートステイなど一時的なこどもの受け入れをした里親の割合を組み込んだ〝活躍率〟の高さをアピールしている。 ■総合拠点を目指す 育成園は明治時代に孤児を受け入れる施設として開設したのが始まり。産前産後母子支援事業や子育て短期支援事業なども実施している。2000年に乳児院、10年に自立援助ホームを開設。23年には市内の別法人から母子生活支援施設を吸収するなど支援の幅は広い。 来年は創立130周年を迎える。同法人の長縄良樹統括施設長は「官では手が届かない部分をカバーしてきたのが法人の歴史だ。どんなこどもや家庭でも支えられる総合的な拠点を目指して、これからも時代に合わせて変わり続けたい」と話している。 日本児童育成園 1895年に社会事業家の五十嵐喜廣が岐阜県飛騨市で孤児を受け入れる「飛騨育児院」として開設。その後、伊藤博文の命名で「日本育児院」と改名した。北海道や京都、米国、樺太などに支部を設けたこともある。法人全体の職員数は140人。