「南海トラフ地震臨時情報」は解除されたが…じつは過去にも例の多い「誘発地震」のおそろしさ
過去に起きた「誘発地震」
東北地方太平洋沖地震から13時間ほどが経った、翌3月12日3時59分ごろに長野県北部・新潟県との県境近くを震源とするマグニチュード6.7、最大震度6強の長野県北部地震が発生した。震源近くの長野県栄村ではこの地震を栄村地震(震災名;栄村大震災)と呼ぶこともある。栄村では死者3名(震災関連死)、負傷者10名、全壊33棟、半壊169棟の被害が出ている。長野県北部ではその後も同日中に震度5弱~6弱の地震が3回発生している。 さらに東北地方太平洋沖地震から4日後の3月15日22時31分には静岡県東部でマグニチュード6.4、最大震度6強という地震が発生した。この地震のほかにも、しばらくの間は日本国内の広い範囲で多くの地震が発生していた。 震源の近傍の活断層の地震にも影響を及ぼしている。茨城県北部では活断層の活動により2011年3月19日にマグニチュード6.1の地震があったのち、2016年12月28日に同じ活断層がマグニチュード6.3の地震を引き起こしたという事例がある。活断層は、通常は1000年~10000年単位という非常にが長い間隔で活動しているが、わずか5年9か月後に同じ活断層が活動したことになる。 この原因を、東北大の研究チームは、「東北地方太平洋沖地震によってひずみが急速に蓄積し、活動間隔が縮まった」としている。巨大地震は、このような近傍の活断層の活動間隔にも影響を及ぼす可能性があることも懸念される。 過去の南海トラフ地震の後にも、誘発された可能性があるとされる地震が発生した事例がある。しかも、直近の南海トラフ地震のひとつである、1944年12月7日1時36分に発生した、マグニチュード7.9の昭和東南海地震の際に発生している。 まず、昭和東南海地震はどんな地震だったのであろうか。和歌山県~静岡県浜名湖沖を震源とした南海トラフ地震における、東側の「半割れ地震」で、強い地震動による家屋倒壊や、三重県尾鷲市で最大9mに及んだ津波により、推定1,223名の死者・行方不明者が出たとされる。被害が大きかったのは愛知県438名、三重県406名、静岡県295名とされる。家屋の全壊18,000戸、半壊36,000戸余りの被害とされる。 非常に大きな被害を受けた地震であるが、報道などではほとんど知らされず、救援の手も非常に乏しかったと言われる。この原因としては、戦時下にあり終戦の7~8か月前の時期にあたり、既に激しい本土空襲も始まっており、日本が劣勢の時期であった。このことから、敵陣営に戦力低下を推測されるような情報について悟られないよう、情報統制が行われていたことによるとされる。そのため、大規模な行政や隣接地域からの救援も行われた記録もないようだ。