南軍銅像撤去や白人至上主義……まだ終わっていない「南北戦争」
しかし、これでアメリカの分断が解消されたわけではありません。北部が全てを握る状況に南部では不満が増幅し、南北戦争が終結した1865年の末にはテネシー州で、元南軍兵士などを中心に白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン」(KKK)が発足したのです。 その後、KKKは南部一帯に広がり、自由民局や黒人に対する抗議、襲撃などが相次ぎました。これに加えて、過度の介入が南部諸州の権限や黒人の自立性を侵害することへの懸念もあり、自由民局は1872年に廃止されました。それにともない、南部では富裕な白人が政治、経済的な影響力を回復。その結果、人種問題は地層深く生き残り、南部は1960年代の公民権運動や2000年代以降のヘイトクライムの主な舞台となってきたのです。 こうしてみたとき、南北戦争は国家としてのアメリカの一体性を高める転機になったものの、北部や黒人にとっては「忘れてはいけない人種差別の歴史」の、現在も南軍旗を掲げる南部の州政府や白人至上主義者にとっては「強権的な政府に立ち向かった歴史」の、それぞれの記念碑となることで、アメリカの分断を促す一因にもなってきたといえます。その意味で、南北戦争は今も終わっていないといえるでしょう。 ----------------------------------- ■六辻彰二(むつじ・しょうじ) 国際政治学者。博士(国際関係)。アフリカをメインフィールドに、幅広く国際政治を分析。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、東京女子大学などで教鞭をとる。著書に『世界の独裁者』(幻冬社)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『対立からわかる! 最新世界情勢』(成美堂出版)。その他、論文多数。Yahoo! ニュース個人オーサー。個人ウェブサイト