現代の恋愛描く『四月になれば彼女は』の裏側 俊英・山田智和が長編監督デビュー
~以下、映画のネタバレを含みます~
映画化に当たって原作からアレンジされたのが、藤代が大学時代の恋人だった春と破局したきっかけとなる人物がOBから春の父親に変わった点、弥生の妹・純のキャラクター設定、ラストシーンなど。いずれも藤代と弥生、春の3人によりフォーカスするための改変となっているが、弥生の失踪が物語の後半から前半に変わった点については、山田監督が原作を読んだ際に抱いた疑問が発端となった。 「原作の中でいろいろな印象的なキーワードがあったんですけど、特に残ったのが(藤代の友人タスクの)“人間ってのは本当に怖いですよ。憎んでいる人より、そばにいて愛してくれる人を容赦なく傷つけるんだから”、そして弥生の“愛を終わらせない方法”という言葉。加えて、弥生の言う“失ってしまったもの”って何だろうと。原作者の川村さんとも相談して、その答えを映画を通して見つけていくのが、1つのテーマになった。そうすると必然的に弥生を原作以上に掘り下げることになり、弥生の失踪を頭に持ってくるかたちになりました。そうすることで、藤代が追いかけるべきものの輪郭もはっきりする。そこは綿密にブラッシュアップしたところかもしれないですね」
弥生は藤代の元患者で、動物園に勤める獣医。映画の冒頭、藤代と弥生は結婚の準備を進める一方で、寝室が別々であったり“問題”を抱えていることがわかってくる。そしてある日、弥生は藤代に「愛を終わらせない方法、それはなんでしょう?」という意味深な言葉を残し、姿を消してしまう。突然の事態に混乱する藤代だが、友人のタスク(仲野太賀)、職場の同僚(ともさかりえ)、弥生の妹・純(河合優実)らは弥生よりも藤代に問題があるかのような反応を見せ、藤代は一層頭を悩ませることになる。山田監督は藤代をどう見たのか。 「不器用だとは思います。彼は精神科医として人を分析しているけれど、自分のことはわかってない。そういう人って多いと思うんですけど、うまく自分の感情を表現できないし、しようともしない。春との過去に囚われて前進していないように見えるかもしれないけれど、弥生と出会ったことで変わってはいるんですよね。でもそれに気付いていない」