景色を眺めて過ごせるだけで幸せ 「ゆるキャン△」の聖地に行ってみた イマドキTV+
湖岸にはぽつりぽつりとテントが並んでいた。数えてみると20張り近くある。かなり冷え込みも厳しくなっていたし、無人も覚悟していたけど、さすが聖地。 山梨県身延町にある浩庵キャンプ場を訪ねたのは12月中旬のことだった。バイク仲間から「いい場所があるよ」と教えてもらったのがきっかけで、ツーリングでは立ち寄らなかったけど、気になって一人で出掛けてみた。 キャンプ場は本栖湖のほとりにあって、眼前に広がるのは旧千円札の裏側に描かれていた風景。つまり、湖面に映る逆さ富士が眺められる。訪ねた日はあいにく風が強く、水面の富士も乱れがちだったけれど、雄大な風景は十分に楽しむことができた。 ここがキャンパーに大人気になったきっかけは、あfろ(あふろ)さん作の同名の漫画が原作のテレビアニメ「ゆるキャン△」に登場したからだそうだ。作品のことは知っていたものの未見だったので、配信中のアマゾンプライムで視聴することにした。 本栖湖は第1話の舞台。ソロキャンプが好きな女子高校生の志摩リンがシーズンオフの浩庵キャンプ場を訪れ、同学年の各務原なでしこと知り合う。出会いをきっかけに、なでしこは野外活動サークルに入ることになって少女たちの物語が始まるのだが、大したことは起きない。毎回どこかでのんびりまったりとキャンプをしてるだけ。 ライバル関係や恋愛感情といったドラマには定番の要素も皆無だ。しかもソロキャンプ好きのリンは別行動が多く、対話がSNS(交流サイト)で完結したりする。友情うんぬんより、焚き火のおこし方や野外料理のノウハウの方が力強く語られる。物語としては淡々とした印象だが、でも不思議と飽きずに見ていられる。 考えてみればキャンプにドラマチックなことなんて期待していない。自然の中で、ただ食って寝て、ぼーっと景色を眺めて過ごせたら、それだけで幸せというものだろう。 このアニメは、景色がただの背景に留まらず、魅力的に描かれているのも特徴だ。現地を訪ねてみて分かったけれど、かなり再現度も高い。聖地巡りを促す理由でもあるだろう。 次はテントかチェアを持っていこう。(ライター 篠原知存)