「武道館ライブ」「訴訟取り下げ」…同日に報じられたとんねるず&ダウンタウンのニュースは何を暗示するのか
ターゲット層とMCの年齢がアップ
ここまで、とんねるずとダウンタウンというレジェンドのリスタートにふれてきたが、ただ漠然と可能性を書いているわけではない。 今秋の番組改編によって民放各局は50代以上のベテランMCを重用している。主なところではTBSの新レギュラー番組『THE MC3』に中居正広(52)、東野幸治(57)、ヒロミ(59)。『巷のウワサ大検証! それって実際どうなの会』に生瀬勝久(64)が起用された。 さらに東野はフジの『この世界は1ダフル』、ヒロミはフジの『ザ・共通テン!』にも起用。ニュース・情報番組ではあるがテレビ朝日も『有働Times』に有働由美子(55)を起用した。 しかもそのほとんどが前番組のMCから年齢層が上がっているため、「ベテラン回帰の起用方針」と言っても過言ではない。これまでテレ朝を除く民放主要3局がコア層(13~49歳、TBSは4~49歳)を最大のターゲットに番組制作してきたが、ここにきて50代以上の世代にもターゲットを拡大した。 特にTBSは「LTV4-59」(Leveraged Timeless Valueの略)という4歳~59歳の個人視聴率獲得を示す指標を設定し、ターゲットの上限をそれまでの49歳から10歳アップ。日テレもコア層のみに振り切る戦略から、高齢層を含む個人視聴率全体の両にらみに変更した。フジも家族などでの「共視聴ナンバーワンを目指す」というコア層の上限にこだわりすぎない戦略を打ち出している。 テレ朝はもともと高齢層を含む戦略だけに、「今秋で主要4局すべてがベテランを起用する背景ができた」と言っていいだろう。ターゲット層の上限が上がり、MCの年齢も上がったばかりの今、とんねるずやダウンタウンのリスタートに追い風が吹いていると言っていいのかもしれない。 ただ、すでに一時代を築いたレジェンドだからこそ「活躍の場はテレビではなくてもOK」という選択をしても驚きはなく、むしろ「動画配信サービスやYouTubeチャンネルなどのほうがいい」という選択もあり得るのだろう。彼らが活躍してきたのはテレビだが、いまだ視聴率獲得に縛られ、スポンサーの顔色をうかがい、表現の幅が狭くなった今、これまでの栄光に傷がつくリスクを負う必要性はない。 ■テレビは2組にとってハイリスク 「レジェンドだからこそ、やりたいことを伸び伸びやったほうがいい」「見たい人からお金をもらって作るビジネスモデルのほうが余計な批判を受けずファンを喜ばせられる」――そんなネットコンテンツに比べてテレビは、すでに成功したレジェンドにとってあまりにハイリスク、ローリターンなビジネスモデルなのかもしれない。 実際、とんねるずの武道館ライブは会場収入が得られたほか、12月20日からFODで有料配信されるが、このような2段組みのビジネスはコアなファン層のみならず、ライトなファン層にも対応したもの。しかも2組のような知名度の高いレジェンドであるほど、その効果は大きくなっていく。 松本もダウンタウンとしても本人の意志はさておき、今後のテレビ出演は不透明であり、批判を恐れた民放各局がチキンレースのように起用を控えそうなムードが漂っている。ただ、松本はAmazonプライム・ビデオの『HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル』『HITOSHI MATSUMOTO presents FREEZE』など配信での実績があるのも強みの一つ。 民放各局はそれぞれ系列の動画配信サービスがあるだけに、例えばフジならFODで『IPPONグランプリ』『人志松本のすべらない話』『まっちゃんねる』などを制作・配信できるかもしれない。つまり、有料コンテンツでスキルを遺憾なく発揮して民放各局と良い関係性を築いていくことも可能だろう。すべては実力次第だが、「レジェンドがテレビからほどよい距離を取って、自由に発信していく」という先駆けになれる可能性もありそうだ。 とんねるずとダウンタウンは、「面白い」だけでなく「カッコイイ」とも言われ、憧れられた大物だけに、今秋の動きをきっかけに本格的なリスタートが始まっていくとしたら何とも興味深い。その先に「共演NG」と言われた両コンビのそろい踏みするコンテンツが誕生したら、それこそ日本中を沸かせるのではないか。 ■ 木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。
木村隆志