一青窈、20年前の女優デビュー秘話「事務所は『歌手に専念して』と大反対だった」
「くまもと復興映画祭」で代表曲も熱唱
歌手の一青窈、俳優の浅野忠信が共演した映画『珈琲時光』(監督ホウ・シャオシェン、2003年)が11月30日夜、熊本県熊本市の熊本城ホール シビックホールで「くまもと復興映画祭」のオープニング作品として上映され、一青、浅野が舞台あいさつを行った。 【写真】永瀬正敏、浅野忠信、一青窈ら豪華ゲストが集結 イベントでのアザーカット 同作は台湾の巨匠ホウ・シャオシェン監督が小津安二郎生誕100年を記念して、『東京物語』のオマージュとして制作した2004年公開作品。東京、群馬、台湾を舞台に、一人の女(一青)の生きざまと古本屋の店主(浅野)との交流を描いた。一青と浅野は映画公開時から約20年ぶりの再会となった。 一青は「まるで幼なじみとの再会のようです。若かりし浅野さんと私を見ていただけたらうれしいです」。飛行機のトラブルと熊本空港からの渋滞でギリギリに会場入りした浅野は「遅れてしまって、本当にごめんなさい。僕はもう1本『箱男』に出させてもらっているので、2作品を見てもらえるのが本当にうれしいです」とあいさつした。 映画祭のディレクターの行定勲監督が「浅野さんは来られないんじゃないかとハラハラしました(笑)。一青さんはこれが演技初めて、この映画でしか見られないような演技をしている。女優を始める大きな一歩だったのではないですか」と水を向けると、一青は「映画出演には、事務所から大反対を受けて、『とにかく歌手活動を続けなさい』と言われたんですけど、チーフマネジャーが『ホウ・シャオシェン監督から声がかかったなら、絶対にやったほうがいい』と言われ、オーデションの形で受けました」と明かした。撮影はバッグにカメラを忍ばせる、隠し撮りのような感じだったという。一青は本作をきっかけに俳優としても活躍している。 『珈琲時光』は世界三大映画祭の一つ、ベネチア国際映画祭コンペティション部門にも呼ばれ、一青と浅野も出席した。一青は「自分で言うのもなんですが、よく寝られる映画なんですね(笑)。ベネチア国際映画祭の上映中にうっかり寝てしまって、隣を見ると、浅野さんも寝ていました」と秘話を明かすと、浅野も「時差ボケもあったからね」と笑った。 行定監督は「でも、眠ってしまう映画が悪いわけではない。僕も寝てしまった映画はあるけど、起きている部分だけを振り返って、『傑作』と言ったことがある。映画として心地がいいということで、寝てしまうのは仕方ない。いい映画はシーンだけを切り取っても傑作。『珈琲時光』は本当に身を委ねて見ていただきたい映画です。今の忙しない映画にはない良さがある」と力説していた。 映画祭は熊本地震だけではなく、能登、台湾・花蓮での地震からの復興と、昨今、台湾の半導体メーカー・TSMCの進出によって深まっている台湾との親交がテーマになっている。一青は「一青という名前は母方の名前で、石川県がルーツ。私の父は台湾人なので、思い入れがあります」といい、舞台あいさつの後には代表曲の『もらい泣き』と『ハナミズキ』を熱唱し、観客の涙を誘っていた。
ENCOUNT編集部