前例なき大統領捜査と、迷走する公捜処 [韓国記者コラム]
【01月07日 KOREA WAVE】韓国・高位公職者犯罪捜査処(公捜処)が6日、ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の逮捕状執行を警察に一任したものの、わずか1日で撤回する事態となった。この混乱は「非常戒厳」宣布が発生してから34日目、公捜処が検察と警察から事件を引き継いで19日目に起こった。 現職大統領を捜査するという前例のない状況で、捜査機関と司法機関の役割がかつてないほど重要視される中、そのプロセスはスムーズさに欠けていた。 この問題の多くは捜査の初期段階から指摘されていた。例えば、内乱罪の捜査権を巡る議論や、公捜処の人員不足など、予測可能な課題への対応が不十分だったと批判されている。内乱罪の捜査権を持つ警察と、起訴権を持つ検察が公捜処と合流して合同捜査本部を設置していれば、防げた可能性もある。「このような結果になるのであれば、公捜処が事件を引き継ぐ必要があったのか」という声も上がっている。 ユン大統領側は、公捜処には内乱罪の捜査権がないと主張して出頭を拒否し、逮捕状にも応じなかった。大統領警護処も同じ理由で逮捕状の執行を阻止した。公捜処は逮捕状執行に失敗した後、「大統領警護処の抵抗を予想できず、協力を期待していた」と述べ、捜査計画の甘さを露呈した。 さらに、公捜処が中央地裁ではなく西部地裁に逮捕状を請求したことも疑念を招いた。公捜処は「住所地の管轄が西部地裁である」と説明したが、令状の発行を有利にするために「裁判官を選定した」のではないかという批判が浮上した。 警察との十分な協議がないまま逮捕状執行を警察に一任したものの、違法性を懸念する声が上がると撤回するなど、公捜処の対応には迷走が目立つ。この状況で公捜処が引き続き事件を担当することへの不安が広がっている。 ユン大統領の代理人であるソク・ドンヒョン弁護士は「公捜処はもっと勉強すべきだ。検察ですら困難な捜査を公捜処が欲を出してやろうとしている」と批判した。捜査機関が被疑者側からこんな言葉を投げかけられること自体が異例だ。 もちろん、合同捜査本部を設置して中央地裁で令状を発行したとしても、大統領側が別の理由で捜査に応じなかった可能性はある。 歴史に残る現職大統領捜査において、捜査機関側は不必要な論争を最小限に抑える努力が求められる。公捜処は過去に「重大事件の捜査では、些細な論争の余地すら残してはならない」と述べていた。 組織の存在意義を示そうとするあまり、その行動が逆に廃止論に火をつけることがないよう、慎重な対応が求められるだろう。【news1 イ・パルグム記者】 (c)KOREA WAVE/AFPBB News
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