インテル「独り負け」招いたCEO肝煎り事業の混沌、時価総額はAMDの半分以下、直近業績は赤字転落
2010年代前半までは、これらのCPU市場で100%近いシェアを誇っていた。だが10nm以降の微細化競争で躓き、製造を台湾TSMCに委託していたAMDの台頭を許すことになる。 近年はソフトバンクグループ(SBG)傘下のアームの攻勢も受けるようになっている。もともとスマホ向けに強いアームは、SBGによる買収後、PCやサーバー向けにも進出。アームのレネ・ハースCEOは「2030年までにはウィンドウズPCの過半がアームベースのCPUになる」と意気込むほどだ。
AI半導体市場への乗り遅れやライバルによる攻勢。インテルを取り巻く環境は確かに厳しいとはいえ、CPU市場でいまだ70%以上のシェアを握る超大手であるのも事実だ。実際、2024年1~6月期もCPU事業では237億ドルを売り上げ、62億ドルの利益を稼いでいる。 ■先端技術開発で後れ インテルの苦しみの元凶はむしろファウンドリー事業だ。この事業が垂れ流す莫大な赤字によって、CPUからの収益を食い潰してしまっているのが現在の姿である。
これまで同社は半導体の設計から製造までを自社で一貫して行い、半導体の高性能化につながる微細化で業界をリードしてきた。 一方でTSMCや韓国サムスン電子が、ファウンドリー事業により半導体の生産規模を拡大。2010年代後半以降、インテルは先端技術開発で後れを取るようになった。 ファウンドリー事業への参入は、パット・ゲルシンガーCEOが2021年に掲げた戦略の柱だ。現行世代では他社への生産委託も活用する一方で、ファウンドリー事業で2025年内には1.8nm相当の次世代品を製造することでTSMCに追い付き、再び業界をリードすることを狙ったのだ。
工場建設をはじめ大規模な投資が必須のファウンドリー事業だが、この点ではコロナ禍以降の世界的なサプライチェーンの混乱や、各国が地政学リスクを重視し始める追い風が吹いた。 インテルは事業立ち上げのためアメリカのアリゾナ州などで工場を建設。半導体サプライチェーンの国内回帰を促すアメリカのCHIPS法によって、最大85億ドルもの助成を受けることも決まっている。 だが当然、顧客あっての受託製造である。そもそも、製造を委託する可能性がある半導体メーカーはインテルのライバルでもある。アマゾンやマイクロソフトといった直接の競合とはならない大手データセンター事業者からの受託は表明した一方で、ドイツとポーランドで建設を進めていた2工場の稼働は、需要が想定に届かずに2年間延期することを発表した。