マクラーレン、ハイブリッド仕様の新型スーパーカー「W1」日本初公開 1275PS/1340Nmという並外れたスペック
■ 「マクラーレン F1」「マクラーレン P1」の継承モデル マクラーレン・オートモーティブは11月13日、ハイブリッドパワートレーンを採用する新型スーパーカー「マクラーレン W1」を日本初公開した。W1の生産台数は399台のみとなり、価格は英国付加価値税を含めて200万ポンド(約3億9000万円)。日本市場の販売台数は非公開とされ、399台すべて売約済みとのアナウンスがされている。 【画像】マクラーレン初の「アンへドラル・ドア」を用いたW1のボディサイズは4635×2074×1182mm(全長×全幅×全高。全幅はミラーをたたんだ状態)、ホイールベースは2680mm。タイヤはピレリ「P ZERO R」でサイズはフロント265/35/R19、リア335/30/R20 W1は究極のパフォーマンスを追求する「1」モデルとして「マクラーレン F1」「マクラーレン P1」の継承モデルに位置付けられる。今回のW1はその「1」モデルにふさわしく、フォーミュラ1から着想を得た「グラウンド・エフェクト・エアロダイナミクス」が与えられるとともに、パワートレーンには新設計のV型8気筒4.0リッターツインターボ「MHP-8」型エンジン(最高出力928PS/最大トルク900Nm)、高出力用に設計された1.384kWhバッテリ、モータースポーツ由来のラジアル・フラックス型Eモーター(最高出力347PS/最大トルク440Nm)、Eリバースを備える新型8速トランスミッションを組み合わせ、システム合計で最高出力1275PS、最大トルク1340Nmという並外れたスペックとした。そして後輪のみで駆動する。 フラットプレーン、バンク角90°のV8エンジンはシリンダーブロック、シリンダーヘッド、ピストンに軽量なアルミニウムを用い、シリンダー内壁にはプラズマ溶射コーティングが採用され、エンジンの最高回転数は9200rpm。350バールのガソリン・ダイレクト・インジェクション(GDI)システムとポート噴射システムを採用することで、CO2排出量を抑えながらエンジンのパフォーマンスを向上させ、マクラーレン史上最高の出力となる233PS/Lという数字を実現した。 Eモジュールに電力を供給する1.384kWhのバッテリは、管理ユニットや配電ユニットとともに密封され、カーボンファイバー製フロアの上にレイアウト。このバッテリは車両の重心を下げるため、カーボンファイバー製モノコック内の低い位置に配置する。W1はゼロ・エミッションモードで最大2kmの走行が可能という。 加速とラップタイムについては公道走行可能なマクラーレン・モデルで史上最速とし、0-300km/h加速で「Speedtail」を上まわり、マクラーレンが基準とするサーキットでは「マクラーレン セナ」のラップタイムを3秒短縮したという。0-100km/h加速は2.7秒、0-200km/h加速は5.8秒、0-300km/hは12.7秒を切る加速力を誇り、最高速は350km/hで電子的に制限される。 一方、エアロセルにはマクラーレン初の「アンへドラル・ドア」の取り付け部が組み込まれた。このドアコンセプトを採用したのは、エアロダイナミクスの要求に応じてルーフにのみヒンジを設置したデザインで、ドロップ式サイドウィンドウのサイズを縮小することでフロントのホイールアーチから高温ラジエーターへの気流が最適化され、冷却性能が向上。スペースが拡大したため、パワートレーンの冷却に必要なラジエーターサイズを小さくでき、パッケージングの最適化と重量削減につながったという。このドアの形状が2024年のF1カー「McLaren MCL38」のサイドボディと似ている点も、ビジュアル上の特徴となっている。 ■ 一番重要なのはパワーウェイトレシオ ジャパンプレミアでは、6月にアジア太平洋地域ディレクターに就任したばかりのシャーロット・ディクソン氏が冒頭にあいさつを行ない、W1が10月6日に本国で発表されたことについて語り、1974年にエマーソン・フィッティパルディ氏がマクラーレンでドライバーズチャンピオンに輝き、チームが初めてF1コンストラクターズチャンピオンシップを制してから50周年の日となることを紹介。W1についてはマクラーレンの革新と技術の結晶であり、最高のドライビングエクスペリエンスを提供することを目指していることを強調した。 製品の具体的な説明はプロダクトマネージャーのヘザー・フィッチ氏が実施。W1の設計理念について「あらゆる場所で圧倒的なパフォーマンス」「圧倒的な最高出力」「ドライバーとの一体感」「ドラマチックな存在感」という4つの原則があり、この原則があってこそ「1」モデルだという。 グラウンド・エフェクト・エアロダイナミクスについては、公道走行可能なマクラーレンモデルで最も先進的なアクティブエアロパーツを装備し、アクティブフロントウィングをはじめ後方に300mm展開するリアウィング「マクラーレン・アクティブ・ロングテール」、フロントが37mm、リアが17mmダウンするサスペンションなどをもって最大1000kgのダウンフォース(レースモード時)を実現した。高ダウンフォースのリアディフューザーを収めるために、パワートレーンを3度傾けてシャシーに搭載するといったことも行なわれている。 また、フィッチ氏はP1に搭載されるハイブリッドシステムに対して40kgの軽量化に成功したことについて触れるとともに、「最高出力は1275PSとなっていますが、一番重要なのはパワーウェイトレシオです。特に軽量化を進める中で車体は1399kg、そしてそれによって非常に圧倒的なパワーウェイトレシオ 911PS/tという数値を達成できています」とアピールした。 フィッチ氏は最後に「マクラーレン W1は私たちの心情に基づいたスーパーカーになっています。世界チャンピオンを勝ち取るようなマインドに基づいて、マクラーレン 1モデルの物語の新しい一章が紡ぎ出されます」と述べ、プレゼンテーションを締めくくった。
Car Watch,編集部:小林 隆