超ハイスピードで闘うWECマシンなのにリヤウイングがない! 斬新すぎるプジョー9X8の中身
2022年からLMHクラスで戦うプジョーのハイパーカー
2021年から新たなトップカテゴリーとしてLMH(ル・マン・ハイパーカー)クラスが導入されることが決定したWEC(FIA世界耐久選手権)。LMHはそれまでのLMP1車両に代わる存在となるモデルで、市販されるハイパーカーをベースにコンペティションモデルを製作するのがその基本。 【写真】WECで走るプジョー9X8 エンジンはリヤミッドに搭載され、駆動輪は後輪。フロントには最高出力で272馬力のエレクトリックモーターの搭載が可能で、システム全体の総合出力は680馬力に制限されるというのが大まかな車両規制だった。 このLMHクラスに2022年からプジョーが進出するという発表をしたのは2020年9月、この年のル・マン24時間レースがスタートする前日のことだった。 この時点ではまだ搭載エンジンの詳細など、その細かな仕様は明らかにされなかったが、その開発はプジョーのモータースポーツ部門であるプジョースポールと、フランスの石油会社大手、トタルのコラボレーションによって進められること。そしてあくまでも現在の段階でレギュレーションから予想した姿にすぎないと前置きして公開された3枚のデザイン・スケッチが公開されたのみだった。 ヘッドライトやテールランプには、一般のプジョー車にも見られる3本線のライティングが採用され、それによって1992年と1993年のル・マン24時間を制した905、あるいは2009年の同レースで勝利を飾った908のDNAをまずは表現してきた。 開発が進むなか、徐々にその詳細が明らかになってきたプジョーのLMHカー。2020年12月にはミッドに搭載されるエンジンが2.6リッターのV型6気筒ツインターボガソリンであることや、これに7速のギヤボックスを組み合わせることなど、主要なメカニズムの構成も発表され、さらに2021年7月にはその車名が「9X8」であることも明らかにされた。
リヤウイングなしでもダウンフォースを発揮する斬新スタイリング
「9」とは905や908といったル・マンウィナーの後継車であることを示し、「X」は駆動方式が全輪駆動であること、そしてそれを実現するためにフロントにエレクトリックモーターを搭載していることを表し、最後の「8」はプジョーの現行モデルの末尾に添えられるものと同じ数字を掲げることで、9X8もまた最新のハイパーカーであることを強くアピールしたものと考えられる。 注目のスペックは、フロントのモーターが272馬力、ミッドのV型6気筒ツインターボエンジンが680馬力で、これはLMHカーのレギュレーションにおける上限値。 ちなみにシステム全体での最高出力も680馬力に制限されているので、エンジンがフルパワーを発生している状況下では、フロントのエレクトリックモーターは駆動できない。バッテリーはプジョースポールと、トタルの子会社であるサフトとの共同開発と発表されている。 正式発表前に公開されたデザインから、実際の9X8のデザインが大きく異なるのは、リヤウイングが備わらないことだ。これはリヤウイングによって得られるダウンフォースがなくても、レギュレーションで定められた、その最大値をクリアすることができたためだったが、2024年シーズンでは、新たなアップデートのなかに、リヤウイング装着というメニューも用意されているという。 ちなみに、この9X8の市販モデルには、2021年に発表された新しいプジョーエンブレムを始め、最新のインテリアデザイン、i-Cockpitコンセプトが採用されている。今後のレースでの活躍に期待したい1台だ。
山崎元裕
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