成人の「2型糖尿病」発症リスクは“幼少期の砂糖の摂取量”で決まる 研究で明らかに
2型糖尿病とは?
編集部: アメリカの南カリフォルニア大学らの研究グループによると、妊娠中を含めた最初の1000日間の砂糖の配給がなかった場合、2型糖尿病の発症リスクが平均35%低くなったとのことですが、2型糖尿病という疾患について教えてください。 久高先生: 糖尿病の中でも、患者数が最も多いタイプが2型糖尿病です。遺伝的な理由によるインスリン分泌の能力低下に加えて、生活習慣の悪化に伴うインスリン抵抗性が起こり、インスリンが相対的に不足した場合に発症します。 一般的に生活習慣病と呼ばれる2型糖尿病は、インスリン分泌の能力低下が鍵を握ります。生活習慣の乱れ以外でも、2型糖尿病患者は糖尿病になりやすい遺伝的な理由を持っているとも言えます。ゲノム解析では2型糖尿病の要因となる多くの遺伝子が報告されており、中でも「KCNQ1」という遺伝子は、日本人の2型糖尿病発症に強く関連していることが判明しています。2型糖尿病の治療方法は、インスリン療法やインスリン以外の薬物療法、GLP-1受容体作動薬という注射薬などです。
研究内容への受け止めは?
編集部: 今回、アメリカの南カリフォルニア大学らの研究グループが発表した内容について、受け止めを教えてください。 久高先生: 母親の生活習慣が胎児期の発育環境に影響し、将来の肥満や糖尿病などの代謝異常の罹患率を規定するという「DOHaD仮説」は有名です。エピゲノムとしてその機構も多くの研究で証明されています。今回のように糖の過剰摂取はもちろんですが、反対に母親が飢餓状態を呈した場合も、将来的に子どもの代謝異常などを誘導することも知られているので、適正な食生活が求められます。
編集部まとめ
アメリカの南カリフォルニア大学らの研究グループは、「第二次世界大戦下で食糧が配給制になっていたイギリスで、妊娠中を含めた最初の1000日間の砂糖の配給がなかった場合、2型糖尿病の発症リスクが平均35%低くなった」という研究結果を発表しました。研究グループの1人は、幼少期の砂糖の摂取量を控えることを勧めていますが「実際には幼児向けの食品にも砂糖は含まれており、摂取しないことは難しい」との認識も示しています。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
監修医師:
久高 将太 先生(琉球大学病院内分泌代謝内科) 琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。