経済損失18兆円…スリープテックは「不眠列島日本」を救うか
計測サービス相次ぐ/眠りの質判定 無呼吸リスク分析
睡眠データを活用したアプリケーションサービスの開発も進んでいる。帝人フロンティア(大阪市北区、平田恭成社長)は、睡眠中のバイタルデータを取得するセンサー「マトウスSS」を販売。センサーをシーツの下に敷いて眠ることで睡眠中の寝返りなどの体動情報や心拍、呼吸数などを測る。取得したデータから睡眠の質を判定し、専用アプリ上でスコア表示する。ベルト形状でデバイスが肌に触れないため、普段通りの睡眠を阻害しないことが特徴だ。 企業向けサービスも展開している。サーバーでのデータ管理と解析により睡眠改善のための定量的な課題解決を支援する。現在はトラック運転手向けなどに活用されている。睡眠状態の変化を確認してもらうことで睡眠習慣の形成につながっているという。 今後について、安井重成新事業開発部ウェアラブルソリューション部長は「法人向け睡眠市場領域の拡大や日中の活動データを測るサービスとのシナジーを狙いたい」と語る。 ソニーグループとエムスリーが設立したサプリム(東京都港区)は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクを計測するサービス「スリープドック」を提供している。従来の法人向けに加え、7月から個人向けも始めた。 ソニー製の小型デバイスなどを身に付けて眠り、加速度やジャイロセンサーから得る微細な体の動きから、呼吸のリズムなどを独自のアルゴリズムで分析する。そのデータを基にリスクを判定したリポートが送られる。睡眠専門クリニックの紹介などフォローも行う。米アップルのスマートウオッチにも専用のアプリで対応する。 SASは就寝中に呼吸が何度も止まる疾患。日本人の6人に1人が潜在患者とされ、体の不調や日中の眠気などを引き起こす。サプリムは「SASは肥満体型の中高年の男性が発症しやすいが、自覚症状はほぼない。気になる人はスリープドックを試してほしい」としている。
ロート製薬/イベント開催で社員の意識向上
睡眠をテーマにしたイベントやセミナーを通じ、社員の啓発に取り組む企業もある。ロート製薬は5月に全社員対象の健康増進イベント「とこチャレ2024睡眠+」を実施した。定期的に実施するウオーキングイベント「とこチャレ」を進化させた形で行った。 イベントには社長や役員も含め過去最多の1983人が参加。「夕方以降のカフェイン摂取を控えよう」「寝る前のスマホレス」など毎日二つの睡眠ミッションを与えた。産業医による睡眠セミナーや睡眠に関する日替わりクイズなども実施した。こうした取り組みを通じ、睡眠に関する意識向上、コミュニケーションの活発化につながったという。 イベント後のアンケートによると、同社が健康目標値として掲げる「睡眠時間6・5時間以上の割合」は前年度実績比10ポイント増の43%に向上した。