「小学校の昼休み有料化」も登場…景気悪化の中国で流行する「罰金経済」という信じられない風潮
経済状況が悪化している中国では、あらゆることにお金がかかる「罰金経済」と呼ばれる風潮が広がりつつある。ジャーナリストの邱海涛さんの著書『中国の台湾武力統一が始まる』(徳間書店)より一部をお届けする――。(第2回) 【この記事の画像を見る】 ■バブル崩壊の影響が「レストラン」に波及 中国の経済状況はすでに述べたように、不動産バブルが弾けるとともに次第に悪化しつつある。それにともない、社会でもさまざまな変化が始まっている。 中国のレストランで食事をする場合、中華料理を選ぶことが圧倒的に多いだろう。 中華料理は料理の種類が豊富なため、それにともない食器の種類も多岐にわたる。基本的な食器としては、箸、湯飲み、茶碗、皿、スプーンなどがあるが、現在、これらの基本的な食器に対して使用料を徴収するレストランが増えている。 2023年12月、「潮新聞」(浙江省政府傘下の新聞)は、地下鉄沿線の各駅周辺のレストランが食器の使用料を徴収しているかどうかについて調査を行った。 すると、調査対象となった50軒のレストランのうち、1軒を除く49軒が客から食器使用料を徴収していることが明らかになった。 ■「料金を支払わなければ食器をもらえない店」が増えている 日本では考えられないことだろう。中華料理にかぎらず、日本の飲食店で箸や皿を頼んで料金を取られるということは、まずない。取り皿を頼めば持ってきてくれるし、箸やスプーンを落としてしまったら、すぐに新しいものと交換してくれる。割り箸のような使い捨てのものでも、断られることや料金を取られることはない。 もちろん中国でも、以前はそのようなことはなかったが、それがいまでは、料金を支払わなければ食器をもらえない店が増えてきているのだ。
■1セットにつき1~2元の使用料が発生 基本的な食器はラップで密封され、「消毒済み」のラベルが貼られて食卓に並べられる。これらを使用すると、1セットにつき1~2元の使用料が発生する。 ところが多くの人は、有料であることを知らずに食器を使用してしまう。無料で使用できる食器があるか尋ねても、存在しないと回答されることが多い。 食器が有料の店を避けようとしても、他店でも同様であり、また、面子を保つために文句を言わずに有料の食器を使用する客も多いのだ。 現在は食の安全に対する意識や健康志向が強くなっているため、「消毒済み」の食器が好まれる一因となっている。 また、新型コロナの流行により清潔志向が高まったことも、食器の有料化を容認する素地となったといえるだろう。 ■中国社会は金銭至上主義になった しかし法律の面では、食器の有料化には大いに問題がある。 現状のやり方は、中国の法的に以下の三つの点で疑問視されている。 ①食器を有料化するならば、同時に、無料提供できるものも用意しなければならない。客には選択する権利があるからだ。 ②有料の食器しかない場合、事前に客にそのことを示し、了承のうえでサービスを提供しなくてはならない。 ③飲食店にとって、食器を清潔に消毒し、客の健康を守ることは当然のことである。 ここ数年、中国社会は金銭至上主義になり、商売人は少しでも儲けようと、理由をつけて消費者から金を取るのが当たり前になった。 とりわけ、景気が悪化してくると、消費者にしわ寄せが転嫁されることが目立って増える。