甲斐拓也のFA去就に巨人・大城の残留が影響? 正捕手望むなら「ソフトバンク残留」か
■「巨人は12球団で最も捕手の競争が熾烈」 巨人で、甲斐の決断に影響を及ぼすか気になることがある。同じく今オフにFA権を行使するか注目された大城卓三が残留を決断したことだ。大城は昨年までは攻守の要として正捕手を務めていたが、阿部慎之助監督が就任した今季は先発マスクをかぶる機会が34試合と激減。本職でない一塁を守る機会が多かった。 他球団のスコアラーは、「正直驚きましたね。岸田行倫に正捕手を奪われる形となり、大城は出場機会を求めて他球団への移籍を視野に、FA権を行使すると思っていました。巨人は岸田、大城、小林誠司と能力の高い捕手が3人そろっている。この状況で甲斐が加入して正捕手で試合に出続けるのは簡単ではありません」と語る。 現役時代に捕手として巨人を含め複数球団を渡り歩いた球界OBは、新天地で不動の正捕手として活躍する難しさを話す。 「捕手は肩が強いから、配球術に長けているから、打撃が良いからといって、試合に出られるポジションではありません。バッテリーを組む投手との信頼関係が重要です。今年の巨人で言えば、菅野智之が先発登板する時は小林誠司が『専属捕手』として今季全試合でマスクをかぶりました。投手の考えを知り、良さを引き出すには時間が必要です。甲斐が移籍した場合は新しい環境に慣れる必要があるし、すぐに結果を求めるのは酷です。試行錯誤をする時期があると思いますが、その時に他の捕手に代えずに我慢して使い続けられるか。巨人は捕手の競争が12球団で最も熾烈です。正捕手を保証されていない覚悟で挑戦したほうがいいでしょう」 捕手の移籍は難しい。22年オフに森友哉(西武→オリックス)、伏見寅威(オリックス→日本ハム)、嶺井博希(DeNA→ソフトバンク)と3人の捕手がFA移籍したことがあったが、不動の正捕手になったというわけでもない。
■移籍して正捕手になるのは難しい 森が移籍したオリックスには若月健矢という球界を代表する「守備型捕手」がいる。森は捕手のほか、強打を生かして指名打者や右翼でも試合に出場している。伏見は今季、日本ハムで2番目に多い52試合で先発マスクをかぶった。24歳の若手成長株・田宮裕涼がブレークしたが、捕手としてはまだまだ課題が多い。34歳の伏見が、投手の持ち味を引き出す配球術でチームを支え、2年連続最下位から2位躍進に貢献した。嶺井はDeNA時代、三浦大輔監督の評価が高く、22年は自己最多の93試合出場と正捕手に最も近い存在だったが、ソフトバンク移籍1年目の昨年は44試合出場にとどまり、今季は4試合出場のみ。シーズンの大半をファームで過ごした。 今オフも各球団の主力捕手がFA権を行使するか注目されたが、大城も坂本誠志郎(阪神)もFA宣言せずに残留を決断した。FA権を行使した木下拓哉(中日)も、獲得に動いている他球団の情報が報じられていないため、残留の可能性が高いとみられる。 日本を代表する捕手、甲斐は野球人生の分岐点で、どのような決断を下すだろうか。 (今川秀悟)
今川秀悟