タイ総選挙後も続くデモ…非常事態宣言が出たバンコクの治安は?
タイ国内の反政府デモが連日報道されています。1月21日にはタイ政府が首都バンコクと周辺県に非常事態宣言を発令しました。期間は22日から60日間。インラック首相の辞任を求める反政府勢力のデモと、そのデモ隊を標的とする暴力事件の激化を見越した対策です。しかし、2月2日に行われたタイ総選挙では、反政府側の妨害によって首都バンコクの3地区と南部9県での投票が中止となったという報道がありました。その後もデモが続いているといいます。 【図表】「赤シャツ」「黄シャツ」 タイ政治の対立構造 いまやビジネスに、観光に、結びつきが強いタイ。非常事態宣言が発令され、死傷者も出るなど随分と危険そうに見えますが、バンコクに渡航しても大丈夫なのでしょうか?
タイの非常事態宣言、その目的は?
そもそも今回、タイ政府が発令した非常事態宣言は、いったいどのようなものなのでしょうか。「外務省 海外安全ホームページ」に掲出されている「反政府集会デモの実施等に関する注意喚起(その5)によれば、「この非常事態宣言は、『非常事態時の国家統治における2005年の勅令』(以下,非常事態令)に基づくものであり、タイ国内の治安維持のため、政府・治安当局者に強い権限を与えるものです」と記載されています。つまり、非常事態宣言下では、治安当局側が不審者を逮捕・拘留したり、デモ集会の禁止措置を取ったりと、実力行使ができるようになるのです。 バンコクで非常事態宣言が発令されるのは、2010年4月以来。タイ政府は今回の発令について、前回のような夜間外出禁止や軍隊による強制排除は行わないと表明し、2月2日に実施された総選挙のための「予防措置」であるとしています。
バンコクは危険地域? 外務省の公式見解は
外務省のウェブサイトでは、それぞれの国・地域に応じた安全対策の目安を知らせる「危険情報」が公開されています。これは、「退避勧告」「渡航延期勧告」「渡航の是非検討」「十分注意」の4段階で、マップ上に色分けしたもの。ただし、危険情報それ自体には、国民の渡航・滞在を制限するような強制力はなく、あくまでもその国・地域の安全対策の目安を示したものとされています。 2月3日現在、バンコク周辺のマップに記載されているのは「十分注意」。これは、「その国・地域への渡航、滞在に当たって特別な注意が必要であることを示し、危険を避けていただくよう、おすすめするもの」となっています。退避勧告や渡航延期勧告に比べてシビアに「危険である」と言い切っているわけでないものの「注意が必要」という、旅行や仕事でバンコク渡航を検討している人にとっては何とも判断しづらい見解です。