マレーシア元首相のマハティール氏、捜査対象に? 島の領有権問題で
マレーシアのマハティール元首相(99)が在任中の政治判断を巡り、捜査対象になる可能性が浮上している。シンガポールと争っていた小島の領有権に関する国際司法裁判所(ICJ)の判断への異議申し立てについて、マハティール氏が独断で取り下げたことが不正行為に当たるとして、王立調査委員会が捜査を勧告した。マハティール氏は、独断ではなかったなどと否定し、対決の構えを見せている。 現地メディアによると、問題となっているのは、南シナ海とシンガポール海峡を結ぶ要衝にあるぺドラブランカ島などの領有権に関する対応だ。ICJは2008年、同島がシンガポールに帰属するとの判断を下したが、マレーシア政府は17年に異議を申し立てた。ところが、18年5月の下院選挙を経てマハティール氏が首相に就任した直後に異議申し立ては取り下げられた。 アンワル首相が当時の経緯の見直しを指示したとされ、調査委が今年に入って調査に乗り出していた。今月5日に議会に提出された報告書は、マハティール氏が内閣の承認を受けないまま不当に領有権を放棄したとして問題視した。 これに対し、マハティール氏は自身のX(ツイッター)に45項目にわたる反論を投稿。異議申し立ての取り下げは閣議で合意された▽異議申し立てがうまく進む可能性は低いとする国際法の専門家らの見解を考慮し、国益を優先した――などと主張した。10日に記者団の取材に応じた際には、調査の背景に政治的動機があるとして現政権を非難したという。 マハティール氏と、後継者と目されていたアンワル氏は過去に政敵として対立したが、18年の下院選を機に和解。ただ確執は解消されてはおらず、くすぶったままだ。マハティール氏はザヒド副首相との間でも名誉毀損(きそん)を巡る裁判を抱える。今年1月と10月には感染症の治療のために入院し、裁判は延期されていた。【バンコク武内彩】