<チ。 -地球の運動について->原作の言葉の力をアニメで表現 “第2の主役”星空の美しさの秘密
◇言葉を際立たせる演出
「チ。」では、「不正解は無意味を意味しない」「でもそんなのを、“愛”とも言えそうです」「世界を、動かせ。」といった多くの名言が登場する。「チ。」をアニメ化する上で岡さんらがこだわったのは、原作の“言葉の力”をアニメで表現することだったという。そのために監督として選んだのが、「寄生獣 セイの格率」「ALL OUT!!」などを手掛けた清水健一さんだった。
「構成の見せ方がうまく、これまで作画監督としても非常に高クオリティーのものをあげていただいている。この作品は、アクションで飛んだり跳ねたりするシーンは少ないのですが、枚数をかけずに、キャラクターやせりふを効果的に見せる演出が必要です。そこで、清水さんの力を、というところでお願いしました」
原作では、強調したいせりふを文字の入れ方などで際立たせることができるが、アニメになった際、流れていってしまう恐れがあるため、「せりふに集中して見られるような演出」を工夫しているという。
「重要なせりふがあるシーンでは、キャラをあまり動かさず、長めのカットにして、せりふを強調して見せるような形をとっています。ただ、すごくせりふが多い作品なので、最も大変なのが編集で、切るに切れずなかなか尺に収まらない。ここは絶対に抜いてはいけないというせりふはもちろん残しつつ、やはり間が欲しい部分もある中で、削れるところを2コマ、3コマと細かく切って、なんとか収めるような作業をしていますね」
◇なぜ「チ。」の星空は美しいのか
アニメ化する上で大事にしたもう一つのポイントは、星空だという。地動説を題材とした「チ。」において、星空は「主役の一つ」といい、アニメでは満天の星が非常に美しく描かれている。「チ。」では、原作もアニメも“実際の星空”を基に描かれているという。
「原作者の魚豊さんが、『チ。』で星空を描かれる時に、星空の座標などを見られるソフトで実際の星空を調べていたとお聞きして、ではアニメでも同じようにソフトを使ってやっていこうと。日時と場所を入力すると、星空が表示される『Stellarium』というプラネタリウムソフトなのですが、魚豊さんが描かれる時に、何月何日と日付まで決めて描かれていたシーンは、アニメもソフトを駆使して、東ヨーロッパ近辺に場所を設定し、原作と同じ日付の星空になるようにしています。アニメ上、ウソをついているシーンもあるのですが、先生からお聞きして日付を決められているシーンはそういう形をとっています」