「私の仕事は走ること。でも…」陸上・田中佑美(25歳)が“モデルハードラー”の肩書に思うこと「違う角度からファンを呼び込むのも大切だと思います」
パリ五輪陸上女子100mハードル代表の富士通・田中佑美(25歳)。初の五輪で準決勝進出を果たし、スタート前の爽やかな笑顔や凛としたたたずまいで、大きな注目を集めた。今春、ファッション誌の企画でモデルに初挑戦。競技中とは異なる華やかなルックスが話題を呼び、“モデルハードラー”という肩書きで報じられることも増えた。五輪期間中には、SNSでの反応をもとにビジュアルを全面に押し出した記事も多く見られたが、田中はこうした注目のされ方をどのように受け止めているのだろうか。《全3回の2回目/つづきを読む》 【写真】「えっ、何頭身なの…?」172cmの“モデルハードラー”田中佑美(25歳)女性誌でも披露の長~い手足とバキバキの腹筋。試合での迫力のハードル飛越に、爽やかな私服インタビュー特撮も…この記事の写真を見る スタッド・ド・フランスのスタートラインに立った田中は、自身の名前をコールされると、少し首を傾けてニコッと微笑んだ。その何気ない仕草は、SNSでたちまち話題の的となった。 <無邪気な笑顔が素敵! > <この子の愛嬌おそろしい> <世界に見つかってしまった>――。 田中が出場した組の選手紹介だけを切り抜いた動画は10万回再生超え。彼女の凛とした佇まいや丁寧な受け答えも、多くの視聴者の心をとらえたようだ。SNSでは、田中のインタビュー動画が拡散され、そうした反応をベースに彼女のビジュアル面をトピックにした記事も多く配信された。 本人は「特に見られる意識はしていなくて、普通に喋っていただけなのですが……」と苦笑いするが、その反響の大きさを肌で感じたという。 「オリンピックが終わってからSNSのフォロワーがぐーんと6万人くらい増えたんです。自分の記事を目にする機会も多くなって、久しぶりに会う友人には『よっ、有名人! 』ってからかわれました(笑)」
ファッション誌でのモデル挑戦も話題に
五輪前からブレイクの波は来ていた。今年のシーズンイン前、男性ファッション誌『Safari』、女性ファッション誌『BAILA』の企画でモデルに挑戦。172cmのすらりとした長身を生かし、モードな雰囲気をまとった彼女の写真は、陸上ファンの間で話題を集めていた。 田中にモデル挑戦の話を振ると、引き受けた意外な理由を教えてくれた。 「去年、ブダペストの代表に選ばれてから注目度が上がったようで、パリにむけた取材依頼が増えていたんです。でも『日本選手権にむけての意気込みは? 』『どう勝ち抜くつもりですか? 』という質問ばかり受けるのが、ちょっとしんどくなっていて……」 高校、大学で世代チャンピオンとなった田中だが、“ニューヒロイン”として注目が集まったのは昨年のこと。春先、日本人女子4人目の12秒台をマークすると、日本選手権の激しい競り合いを3位で勝ち抜き、ブダペスト世界選手権代表の座を射止めた。 そしてパリ行きがかかっていた今季は、寺田明日香(ジャパンクリエイト)、青木益未(七十七銀行)、福部真子(日本建設工業)、田中を筆頭に12秒台が6人そろい、歴史的な激戦が予想されていた。その渦中にある田中にどれほどの重圧がかかっていたかは、想像に難くない。 「一定の露出は必要ですけれど、ガチガチの陸上取材ばかり受けていたら、余計にプレッシャーになるなと気づいて。少し離れて『陸上してます』くらいの温度感で受けられる取材が、ちょうどいいリフレッシュになると思ったんです」
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