「廃業を破棄します」東大阪の町工場の夫妻、取引先から応援されて再起
樹脂・アルミ・真鍮の試作を手がける「サントー試作モデル」(大阪府東大阪市)が2024年10月、廃業する方針を破棄することを自社サイトで公表しました。注文が入らない期間が続き、取引先に廃業の挨拶はがきを出したところ「あんたところはつぶれたらあかん」「仕事探してきたる」などと激励の電話が相次ぎ、仕事が舞い込んできたからです。2代目代表取締役の山東基実さんと枝未さん夫妻は「この先、どこまで耐えしのげるかわかりませんが、1日でも長く存続し、恩返しをしていきたいです」と話しています。 ロット数とは 小ロットの強みを生かした中小企業の事例集【写真特集】
サントー試作モデル、「何とかならんか」を断らない
サントー試作モデルは、1個から1000個まで樹脂・軽金属の切削試作を手がける会社です。家電メーカーの部品を試作製作するのが主な仕事です。 ただし、創業者である先代・重一さんの「何とかならんかと頼まれたらできるだけ断らない」という方針を受け継ぎ、奈良国立博物館向けに展示物を感光変質から守るための光ファイバーによるLED投光システムを試作開発したり、AI駅員ロボットのパーツを製作したり、ラグビー大会のトロフィーを他社といっしょにコラボ製作したりと、東大阪の町工場らしく幅広い仕事を引き受けています。
2019年に事業承継 いきなり米中摩擦で受注減
2代目の山東基実さんが会社を継いだのが2019年6月。さあ、これからというときに、いきなり米中摩擦のあおりを受けて、受注が急減します。手持ちの現金が少しずつ減っていくのに、できることは工場の掃除のみ。先代の重一さんからは「つぶすために会社を譲ったんと違うぞ」と叱られてしまいます。 今後の方向性も定まらないまま、コロナ禍へと突入していきます。枝未さんは「誰も正解が分からないなか、できることは手あたり次第、動きました」と当時を振り返ります。
息子から「こんなに人の役に立ってるんや」
X(旧Twitter)やInstagramなどSNSやブログで情報発信を始めたり、MOBIO(ものづくりビジネスセンター大阪)のYoutubeに出演したり、展示会に出たり……。 大阪府内の病院で、コロナ禍で物流が止まって、消毒液やマスク、フェイスシールドなどあらゆるものが品薄で困っていると聞くと、自分たちでできることはないかを考えて曇りにくいフェイスシールドを作って届けました。すると「これで頑張れる」と医師たちにとても感謝されたそうです。 「このときは無償だったのですが、息子が『うちの会社、こんなに人の役に立ってるんや』と感じたようで入社してくれるきっかけになりました」 夢中で動き続けたことが奏功し、コロナ禍では新規の仕事が舞い込むようになってきました。 「コロナ禍でも仕事頂けていたんだから、コロナ禍が明けたらさらに仕事の問い合わせが増えるに違いない」。そう待ち構えていたのに、原材料高などのあおりを受けて、2023年の途中から試作の相談はぱたりと止まってしまいました。