スマホ育児は「親として失格」なのか…幼いわが子にスマホを渡してしまう子育て親の苦しみ
■「お手本」なく育った親が一番苦しんでいる 多くの先生方が指摘されていたのは、親自身が一番苦しんでいるだろうということです。 現在は、祖父母との同居も減っていて、昔のようなわかりやすい「親のモデル」がありません。子どもを持つ親はみんな必死になって育児情報をネットでかき集めて、この知育アプリがいいと聞けばそれを使い、日本語もろくにしゃべれない子どもに英会話を習わせますよね。親がいろんな情報に振り回され、そのしわ寄せが子どもにいっているのです。 『ルポ スマホ育児が子どもを壊す』には、その現状を具体的なエピソードで伝えているので、状況が頭の中に浮かんで実感できると思います。大切なのは、親が情報に振り回されるのではなく、まずは子どもと向き合うこと、これはいちばんのはずです。 ■現場の先生、子どもたちの生の声に耳を傾ける 現代は、世の中に情報が氾濫しすぎて、学校の先生方も、地域の大人たちも、子どもたち一人ひとりに向き合うことができず、情報の海でおぼれてしまっているように思います。まずはいったん落ち着いて、自分に必要な情報を洗い出してみることです。 子育ては、人がすべきか、デジタルがすべきかの二項対立で行われるべきものではありません。どちらにも一長一短あるかもしれない。 「スマホを使わなかったらいい」「時間を制限したらいい」と言うのは簡単ですが、人類が初めて足を踏み入れている領域である以上、誰もスマホ育児の正解などわかりません。 だとしたら、新時代のデジタルの育児がどのようなものであるかを認識した上で、そこで足りないものを社会としてどう補っていくかを考えていく必要があるのです。そのためには、何よりもっとも近くで子どもたちを見ている現場の先生、そして子どもたちの生の声に耳を傾けるところからはじめるとよいと思います。 同時に、正解のないスマホ育児に日々奮闘している世のお父さん、お母さんを温かい目で見守ることが大事だと思います。 ---------- 石井 光太(いしい・こうた) ノンフィクション作家 1977年東京生まれ。作家。国内外の貧困、災害、事件などをテーマに取材・執筆活動をおこなう。著書に『物乞う仏陀』(文春文庫)、『神の棄てた裸体 イスラームの夜を歩く』『遺体 震災、津波の果てに』(いずれも新潮文庫)など多数。2021年『こどもホスピスの奇跡』(新潮社)で新潮ドキュメント賞を受賞。 ----------
ノンフィクション作家 石井 光太