「頑張りなさい」と言われ育った子どもの末路…その悲劇的な結末から学ぶ、親がやるべきこと
その一言が、子どものやる気を奪ってる!?
「もっと頑張りなさい!」 この言葉は、子どもにとってどれほどの重みを持つのでしょうか? 普通に考えれば、子どものやる気を引き出す、親からの叱咤激励の言葉に思えますが、その使い方次第では子どもの意欲を破壊し、思わぬ形で悪影響を及ぼす可能性がある言葉となるのです。 「みんなと仲良く」は呪いの言葉? 1万人の非行少年を見てきた犯罪心理学者が警鐘を鳴らす「危ない声掛け」とは そこで今回は、1万人の非行少年・犯罪者と面接・心理分析してきた犯罪心理学者の出口保行さんが、事例とともに「危ない声かけ」「よりよい子育て」を解説したベストセラーのマンガ版『マンガ 犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』(SBクリエイティブ)から、一部抜粋し、ご紹介します。 子どもの頃から両親が不仲で、母親から常に「父のようになるな、もっと頑張りなさい」とプレッシャーをかけられ続けたナオト。そんな母の言葉とは裏腹に、ナオトは努力することをやめてしまう。その理由とは?
「頑張りなさい」が意欲を破壊する
母から「頑張りなさい」と言われ続け、その努力がやっと成果として出始めていたのに…。 それでもなお厳しく接する母に、ナオトは意欲を失い、努力をすることをやめてしまった。そして、高校卒業後――。
「頑張って」の言葉で意欲を持たせることはできない
たとえば親が子どもに対して説教をしているとき。話している内容は非の打ちどころのない正論かもしれません。丁寧な言葉を使っているかもしれません。しかし、親からすれば「いいことを言った」と思っていても、子どもからすると「何もわかってない」と思うことはよくあります。 少年鑑別所での面会の様子などを見ていると、それが如実にわかります。「親はいいことを言っているが、子どもはまったく信用していないな」と思うことがあります。 そういう親は「頑張れって応援してきたのに、うちの子は全然こたえようとしなかった」と言います。しかし、子どもは応援だと受け止められなかったのです。同じ言葉でも、受け止め方は同じとは限りません。180度違うことだってあるのです。そこに気づかなければなりません。 「頑張って」と言われるだけでは頑張れません。「やる気を出せ」「本気を出せ」と言われれば、それだけで意欲が出るわけではありません。 意欲は自分の内側から出てくるもので、他者が植えつけることはできません。ただ、意欲を促すことはできます。心理学ではこれを「動機づけ」と言います。 うまく動機づけをすることができれば、ナオトももっといろいろなことを頑張れたでしょう。小学校の担任の先生は、ナオトの努力を褒めて勉強への意欲を促進することができていました。ところが、母親は褒めるどころか逆のことをしました。内心はほっとしているのに、「これくらいで満足するな」「もっと頑張れ」とたきつけるのです。 これではせっかく芽生えたやる気もそがれてしまうというもの。本当はこのときが大きなチャンスだったのです。頑張ってみよう、努力してみようと思って実際に行動したナオトのことを褒めてあげるべきでした。たとえ結果がよくなかったとしても、プロセスを褒めることで意欲は高まります。「頑張って」ではなく、「頑張っているね」「よく頑張ったね」と認めることが応援になり、意欲を伸ばすことになるのです。 頑張ったことさえ否定されたナオトは、努力することをやめてしまいました。その後、引きこもって生活をしながら、焦りはあるものの、自分で課題解決する意欲を持つことができません。そして友達からの誘いをきっかけに、大麻に逃げることになりました。 まさに現実逃避です。現実から簡単に目を背け、忘れることができるものとしてすぐに依存することになります。こうなってしまうと、現実に向き合い課題解決への意欲を持つことはますます困難になるのです。 自分が何をしたって、どうせ状況は変わらない。努力してもムダ……。もともとやる気がないわけではなく、行動しても結果が出ないことを何度も経験するうちに、やる気を失い行動しなくなってしまう状態が「学習性無力感」です。 次回はこの「学習性無力感」について、そしてナオトにどんな対応をすればよかったのか、詳しく解説します。