なぜ女性は「年を取ること」を恐れる?【専門家が解説】
女性が老いることを恐れる理由
場所や内容は違っても、鏡に映る老化のサインにショックを受けた経験は誰にでもある。そんなサインを見るたびにいちいち動揺するなんてどうかしていると思うかもしれないけれど、それは生物学的に自然な反応。 具体的に説明しよう。洞窟に住んでいた私たちの祖先は、生殖能力と結び付けて女性を大切にした。というのも、過酷な時代には生存と繁殖が何より大事だったから。つまり、当時は配偶者を見つけて繁殖活動をすることが身の安全を確保する手段だった。 だから私たちは生まれつき、老いに対する偏見を持っている。女性が経済的に自立して、自分の意思で子どもを持つか持たないかを決められる社会に暮らしていても、この偏見からは逃れられない。もちろん、この老化嫌いには現代の生活も関係している。 「現代の子どもたちは、若い人には価値があり、高齢者には価値がないというメッセージを散々聞かされて育ちます」と話すのは、著書に『A Manual for Being Human』を持つ臨床心理士のソフィー・モート博士。「年と共に女性の価値は下がって男性の価値は上がるとハッキリ言われたことはなくても、若い頃から見てきた広告、テレビ番組、映画を通して、そのメッセージを内在化しているはずです」 テレビのない家で育っても、老いることをよしとしない考え方は養われてしまう。成長期に生活を共にした人の考え方や行動は、私たちのボディイメージと同様、年を取ることに対する考え方にも影響を与える。 モート博士によると、「若作りをした中年女性」のようなフレーズは、老いを“受け入れるべきもの”から“恐れるべきもの”へと変えてしまうほどに強力。そして、この状況を説明する上で外せないのはSNSの存在だ。 「老いに対する恐れがこれほど蔓延しているのはSNSのせいでしょう」と話すのは、ローズ・アグダミ博士。身近な人だけでなく社会全体と自分を比較させてしまうSNSの能力により、現代人はよりイメージ重視の生き方をするようになってきた。