センバツ高校野球 常葉大菊川 勝利の願い、献立に込め 「食」支える調理師と栄養士 /静岡
◇「選手の笑顔がやりがい」 18日に開幕する第95回記念選抜高校野球大会に挑む常葉大菊川の選手たちの食事を支えているのが、調理師の戸塚彰二さん(51)と、管理栄養士の安原叶(かのう)さん(29)だ。選手寮での食事提供を2018年から任され、育ち盛りの選手の体づくりを下支えしている。「おいしいものをたくさん食べて、思いきり戦ってほしい」。日々の献立に勝利への願いを込める。【皆川真仁】 日夜練習に励む選手たちのスケジュールに合わせ、2人は毎朝6時ごろ寮に出勤する。安原さんが考えてきた寮生21人分の朝食の献立を、戸塚さんが用意する。朝食が終わるやいなや、安原さんは夕食の献立づくりを進める。その食材を戸塚さんがそろえ、練習で疲れ果てた選手にできたての夕飯を振る舞う。 2人をチームと結びつけたのは前監督の高橋利和さん(36)。戸塚さんは市内で日本料理店を17年間営むなか、常連だった高橋さんから懇願されて寮で腕を振るうことに。 5年が過ぎ、戸塚さんは選手から「大将」の愛称で親しまれる。選手1人につき1日に約3合の米を炊くなど「限られた時間で大量の食事をつくるのは大変」と苦笑いしつつ、「選手たちは息子のような存在。うまそうにご飯を食べる顔にやりがいを感じる」と目を細める。 安原さんは常葉大菊川の卒業生で、中学時代から野球部を応援し続けてきた。「栄養士としてチームを支えたい」と、高校卒業後はスポーツ栄養学を学ぶため兵庫県内の大学に進んだ。静岡を離れても、休日には野球部の公式戦に出かけ、写真撮影や選手の体力測定などでチームを支えてきた。やがて大学院で管理栄養士の資格を取得すると、熱意を見込んだ高橋さんから「お前しかいない」と声を掛けられ、快諾した。 新型コロナ対策として、寮の食堂には今も仕切りが設けられ、黙食が続く。「食事が少しでも楽しくなるように」。安原さんは選手の要望を献立に反映させたり、クリスマスなどの行事に合わせたメニューで食卓を彩ったりしている。 2人が食生活の支え手になってから初めてのセンバツ。戸塚さんは「悔いが残らないよう、日ごろの食生活を支えてあげたい」、安原さんは「試合中の雰囲気の切り替えがうまく、お互いに厳しいことも言い合えるチーム。笑顔で戦ってほしい」とエールを送る。