山下達郎やAORを愛するUK4人組、PREPが語る「懐かしくも新しい」ポップスの作り方
最新アルバム『The Programme』制作秘話
―ロンドンといえば、レアグルーヴやアシッドジャズをはじめ、歴史的に過去のソウルミュージックやファンク等がクラブカルチャーの中で支持されて、新しい音楽として再生させていく土壌がある街だと思うのですが、そういったジャンルから影響をうけた点はありますか? リウェリン:興味深い質問だね。そう、僕は間違いなくジャミロクワイの大ファンだ。ツアー中にジャミロクワイをかけてみんなで歌ったりもするよ(笑)。少なくとも僕個人は影響を受けていると思う。けどまあ、PREPはブリティッシュ・ミュージックの伝統に反しているようなところはあるんだけどさ。 ギョーム:それはあるね。 リウェリン:というのも、ブリティッシュ・ミュージックの多くはダイレクトというか、シンプルだったりファンキーだったりダーティだったりするんだ。僕たちもダイレクトではあるけど、もっとジャズの影響が強いから、なめらかな感じなんだよね。例えば僕たちがアジアの国々でオーディエンスに恵まれたのは、そういう感じのサウンドがヨーロッパより人気があるからじゃないかと思う。 トム:僕とダンが出会った頃、他のアーティストたちに向けてたくさん曲を書いていた時のことを思い出すよ。ハーモニーやコードを極めてシンプルにしておく必要があったんだ。少しでもフルーティでジャジーな方向に持っていこうとするとドン引きされてしまうというか、ファッショナブルじゃないと思われてしまってね。PREPが始まった辺りから、少しずつ変わってはきていると思うけど。リウェリンの言っていることには同感だよ。僕たちは、自分たちの音楽とはかなり違うトレンドの中で、何とか居場所を作ろうと励んできたんだ。 ―最新アルバム『The Programme』について伺わせて下さい。1st『Prep』(2020年)はセルフ・プロデュース作でしたが、この二作目でプロデューサーのルノー・ルタン(Renaud Letang:ファイスト、ベニー・シングスなどで有名)と共同作業を行おうと思ったのはなぜだったんでしょうか? ギョーム:理由は色々だけど、共同作業から何か学べるかもしれないと思ったし、何よりサウンドが良くなるかもしれないと思ったんだ。僕たちは個性が全然異なる個人の集まりだけど、5番目にベストな人を連れてくることによって、物事が複雑になる可能性はあるにせよ、それ以上により興味深いことになると考えたんだ。他人のビジョンに基づいて動くのは、ある意味ラディカルで変わったやり方なんだよね。ルノーは僕たちを安全地帯から引っ張り出してくれたと思うよ。 トム:何だか、自分たちをさらけ出すような感じだったね。僕たちのプレイやパフォーマンスにスポットライトが当たっているような感じ。ルノーはむき出しの状態になるまで僕たちの演奏をそぎ落とそうとしていた気がする。そして、大抵の場合彼が正しかった。だから、僕たちの過去の作品より親密なものになった気がする。前作はもう少しエレクトロニック寄りだったし、そういう意味でも違う仕上がりになったね。 ―レジェンダリーなアーティスト、エディ・チャコンのゲスト参加も目を引きます。 ギョーム:エディ・チャコンの存在を知ったときのことはよく憶えているよ。僕のSpotify上に突然流れてきたんだ。「Holy Hell」という曲だった。ものすごく気に入ったからメンバーにも聴かせて、何か一緒にやれたら最高だよねって話になったんだ。 1年後、僕たちのアメリカのレーベルに、セッションを取り付けてくれるように頼んだんだ。そうしたら居場所を突き止めてくれて、彼も快諾してくれた。それで改めて彼のことを調べたら、90年代の作品が出てきて……その時まで彼があのチャールズ&エディのエディだったとは僕たちの誰も気づいていなかったんだ!だから、いきなり「レジェンドとスタジオにいる」という状態になったよ(笑)。LAのストーンズ・スロウ・スタジオで一緒に「Call It」を仕上げたんだ。 ギョーム:初対面でいきなり「こういうアイデアがあるんだ」と言ってくれたんだ。そこから2分以内にリウェリンがコードを考えて、僕もグルーヴを考えて……トムとエディは早くもメロディに取り組み始めて、すべてがトントン拍子に進んだね。4時間くらいでコードや構成が決まったんじゃないかな。 トム:本当に、類まれなくらいクールな人だったよ。とても興味深い人生を送ってきた人で、しかもそれらに関してオープンで、面白い話を色々してくれたんだ。すっかり意気投合して、彼がロンドンでプレイしたときも観に行ったよ。アメリカでも再会したしね。 ―その他にも、タイのプム・ヴィプリット、LAのヴィッキー・フェアウェル、モントリオールのアノマリー等、多彩なゲストが参加していますね。 トム:僕たちは3人の大ファンだから、彼らがどんなものをもたらしてくれるか興味があったし、きっとエキサイティングなことになると思ったんだ。プムとはタイで曲を書いたんだよ。僕たちがツアー中にね。バンコクにあるプラスティック・プラスティックのスタジオを一緒に借りたんだ。プムとはフェスが一緒でね。彼とスタジオで過ごすのはとにかく気楽なんだ。すぐに意気投合したよ。 ヴィッキーは僕たちのLAでのショウに来てくれたんだ。僕たちは彼女の音楽の大ファンなんだ。素晴らしいプレイヤーだし、自分自身のプロジェクトの他にも色んな曲を書いていることも知っていた。アンダーソン・パークのアルバムにも参加しているし、興味深い作品を色々出しているよ。マイルド・ハイ・クラブも彼女がプロデュースしたんだ。それで一緒にスタジオに入れたらいいなと思って、彼女に声をかけたら、予定がうまく合ったんだ。LAに着いて最初のセッションが彼女とのものだったよ。 リウェリン:アノマリーに関してはリモートで参加してもらったんだ。本当に強力なインストゥルメンタリストがアルバムでソロをプレイしてくれるというのは素晴らしいことだね。これまで話に出てきた(スティーリー・ダンなどの)バンドやアーティストたちも強力なゲストたちを迎えていたし、以前からそういうカルチャーが大好きなんだ。