だってイケメンだったんだもん…婚活で苦戦中の35歳女性、1,000万円の被害!嗚咽しながら64歳母に明かした〈ロマンス詐欺〉の「まさかの手口」【CFPの助言】
地方に住む美智子さん(64歳)のもとに、東京で一人暮らしをしている娘・綾さん(35歳)から涙声で「詐欺に遭ったかもしれない」という電話がかかってきました。話を聞くと被害額は1,000万円とのこと。その後わかったことですが、綾さんが遭ったのは被害金額の回収も難しい「ロマンス詐欺」といわれるものでした。本記事では、CFPなどの資格を持つトータルマネーコンサルタントの新井智美さんが、暗号資産(以下、仮想通貨)を使ったロマンス詐欺の現状について解説します。 【早見表】がんの「平均治療費」はいくら?…120の疾病別、入院治療費/入院外治療費
ロマンス詐欺とは?
ロマンス詐欺※1とは、SNSを利用した詐欺でFacebookやInstagramなどに直接メッセージが届き、やり取りをしているうちに巧みに仮想通貨取引に誘導され、金銭を騙し取られる詐欺の手口です。 もちろん仮想通貨取引だけでなく、プレゼントを贈るための送料と偽ってお金を騙し取る手口や、結婚前の旅行費用と偽ってお金を騙し取る手口もあります。 実際に相手と会うことはなく、相手の写真も雑誌のモデルなどの写真を流用するケースが多いのも特徴です。 ロマンス詐欺の特徴は恋愛感情を利用することです。「あなたは素敵な人だ。結婚したい」など甘い言葉を次々と投げかけ、「将来はこんな風に一緒に生活したい。そのために一緒にお金を貯めよう」と暗号資産取引所のサイトに誘導するのです。利用する暗号資産取引所が架空のものであることはいうまでもありません。 しかし、冷静に考えると会ったこともない相手に結婚しようなどと言われ、本気にするものでしょうか? 綾さんが1,000万円もの大金を騙し取られた経緯は以下のとおりです。 ※1:以下参照 SNS型ロマンス詐欺|最新の詐欺|警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ(npa.go.jp)
綾さんがロマンス詐欺に遭った経緯
ある日、綾さんのInstagramに知らない人からメッセージが届きました。綾さんは普段からInstagramを利用して日々あった出来事などをアップしていたのです。メッセージは「あなたとはとても趣味が合いそうです。もっとあなたのことを知りたいので友達になってください。」との内容で、綾さんは特段疑うことなくメッセージを返信し、趣味などの話をやり取りしていました。 そうしているうちに、相手は「ラインで話しませんか? ラインのIDを教えてください」と言ってきました。ラインも普段からよく利用しているため。特に抵抗感もなくラインでつながり、その後はラインでのやり取りが始まりました。 毎日のように送られてくる相手の顔写真はモデルのようにイケメンで高身長。綾さんの好みにピッタリでした。ちょうど婚活中でなかなか「この人!」という人に出会えず苦戦していた綾さんは一気に親近感を持ちました。 相手の「愛している」「結婚したい」「あなたのような素敵な女性を1人にさせたくない」など、一人暮らしの寂しさを埋める言葉から毎日のやり取りが余計楽しく感じられたのです。相手が名古屋在住の「足達良介」と名乗ったことも安心した原因です。 そのうち、相手は「仮想通貨取引に興味がありませんか?」と言ってきました。綾さんは仮想通貨には興味があるものの、ハイリスクであることや自分自身まだ投資などを行った経験がないことから、「興味はあるけど、怖い」と答えました。そうすると相手は「大丈夫!僕が教えてあげるから」と仮想通貨取引所のサイトをダウンロードするように言ってきたのです。指示どおりにダウンロードし、ログインしたものの、綾さんはまだ怖くて取引ができません。 すると「10万円からでいいから試してみよう」と言われ、綾さんも10万円くらいならいいかと思い、取引を行うことにしました。その取引所では、仮想通貨を購入する際に口座を指定され、そこに振り込む仕組みになっていました。それも綾さんが全く知らない個人名義なのです。 しかし、疑うことで相手の信頼を失いたくないという気持ちから、綾さんは指定された口座に10万円を振り込みました。その後、取引所のサイトをみると、自分の保有する仮想通貨が増えており、確かに反映されていることが確認できました。そして、相手の言うとおり取引を行うと、1回の取引で3万円もの利益が出たのです。30%の利益です。 綾さんはビックリしました。そんな綾さんに相手は「これが仮想通貨の魅力です。今はどんどん値上がりしている時期なので、多く購入して取引を繰り返すと一気に大きな額になります。もちろん好きなときに引き出せます」といいます。 そこで綾さんが「利益分を残して元本だけ引き出したい」というと、次の日には綾さんの口座に10万円が振り込まれていました。振込人名義は綾さんの知らない女性の名義だったのですが、綾さんは特段気にしませんでした。 その日を境に「今いくらなら投資できますか?」というラインが頻繁にくるようになりました。綾さんが「もう少し慎重に考えてからにしたい」と答えると、「なぜですか? 今は一番いいタイミングです。行動するなら早いほうがいい」とせがまれます。 綾さんはそのとき貯金が800万円程度あったものの、全て銀行に預けたままだったので、30%も増える仮想通貨の魅力に惹かれ、「じゃあ100万円なら……。」と答えてしまいます。さらに、自分の貯蓄額が800万円あることも言ってしまったのです。 それからは毎日のように「お金を振り込む準備はできましたか?」と連絡がきました。「お金が増えたら2人で、世界中を旅行しよう」という甘い言葉とともに。まだ準備ができていないと回答すると、「なぜそんなに時間がかかるのですか? ネットバンキングなら即日振り込めるはずです。もしかして私のことを信用していないのですか?」と言われ、その押し問答がずっと続く毎日。 綾さんは毎日続くやり取りに根負けし、100万円、200万円と取引所のサイトから指示される口座(個人口座)に振り込みを続け、最終的には消費者金融からお金を借りて振り込むことまでしてしまったのです。 そして振込総額が1,000万円に達したとき、取引所サイトの画面では1,000万円の元本が4,000万円までになっていました。 そろそろ、元本だけでも回収したいと綾さんが思った矢先、いきなり相手と連絡が取れなくなりました。同時に取引所のサイトにもアクセスできなくなってしまったのです。そのときに初めて綾さんは騙されたことに気づいたそうです。そしてすぐに母に連絡したのです。