【独自】自民党の山口県議らに「事実上の裏金」2788万円、党県連は取材に内容明かさず 島根でも2451万円
自民党の地方組織である山口、島根両県連が2023年、県議らに対して使途報告の不要な政治資金を渡し、総額がそれぞれ2788万円と2451万円に上っていたことが分かった。政党が政治家個人に渡すことで使途報告義務がない党本部の政策活動費と同様に使途が不明になっている。 【図解】自民党山口・島根両県連が2023年に支出した使途報告不要の政治資金 中国地方5県にある党県連が各県選管に提出し、29日までにインターネットで公開された23年の政治資金収支報告書を中国新聞が集計、取材した。広島、岡山、鳥取の3県連は使途の分からない政治家個人への支出はなかった。 山口県連の収支報告書よると、県連は23年1~12月に計49回、県連幹部や県議ら23人に活動費を支出。1回の金額は20万~70万円が多く、合計で2788万円になる。県連幹部には100万円以上を複数回渡し、幹事長の友田有(たもつ)県議は9回で計500万円、新谷和彦会長は5回で計550万円を受け取っていた。 県連幹部や県議が活動費を何に使ったのかは書かれていない。中国新聞の取材に対して県連は文書で回答し、「法令に従い適正に処理し、収支を報告している」と説明。使途は明かさなかった。今後の対応は「法改正の動向も踏まえ適正に対応する」とした。 一方、島根県連の収支報告書によると県連は23年1月13日と19日、3~4月の県議選に立候補する県議ら28人に活動費として各70万~80万円を渡していた。総額は2170万円。収支報告書に使途は書かれていないが、80万円を受け取った県議は取材に「政策を載せて配るリーフレットの制作費や事務所を借りる費用など県議選にはいろいろな費用がかかる」と語った。 この活動費とは別に、県連は同年4~12月に組織活動費として県議ら13人に各5万~30万円、計281万円を渡した。県連によると、東京での研修や党本部の会合に参加する際の費用という。活動費と組織活動費の合計は2451万円になる。1人当たりでは絲原(いとはら)徳康会長の130万円が最多だった。 県連によると今年は組織活動費、活動費ともに出していないという。絲原会長は「透明化を図るために今後の在り方を協議したい」としている。
政策活動費
政党が政治家個人に渡す政治資金で、使途報告の義務がない。政治資金規正法の抜け穴を逆手に取った支出で「事実上の裏金」と指摘される。毎年10億円以上を党幹部らに提供してきた自民党は見直しに消極的だったが、10月の衆院選大敗後に方針を転換。廃止の方向で与野党が協議している。政策活動費と同様の制度は自民党の16道府県連にあり、2020~22年に山口県連が4200万円、島根県連が2695万円を支出していた。
中国新聞社