ストレスで心臓バクバク…日本兵2万2000人が死亡した「硫黄島」地下壕の「知られざる状況」
硫黄島の地下壕はサウナ状態、暗闇、極度に窮屈
冒頭、映画ランボーと硫黄島の共通点を指摘しましたが、映画と実際とでは壕の状況は大きく違います。私が2019年の遺骨収集団に参加した際に入った地下壕は、地上から深さ16メートル。火山活動による地熱によりサウナかそれ以上の熱気に満ちていました。壕内にいるのは10分が限界でした。 また、生還者の証言によると、硫黄島の地下壕はごく一部の例外を除いて電灯はありませんでした。熱気に満ちた暗黒の地下壕を拠点に戦い続けた守備隊兵士の精神力は想像を絶します。壕内部の高さも腰をかがめなくてはならないほどの窮屈さでした。「閉所恐怖症」の気がある私は作業中、時折、ストレスで心臓がバクバクすることがありました。
地下壕駆使で想定を超える持久戦に
「硫黄島の組織的抵抗は2週間と判断す」――。 米軍上陸3日後の1945年2月22日の大本営の幹部会議では、そんな見通しが発言されたとの記録が残ります(軍事史学会編「機密戦争日誌 下」錦正社)。が、実際に玉砕した日とされるのは2週間を大きく超える3月26日。守備隊は組織的戦闘により36日間も島を守り続けました。地下壕を使った戦術が軍上層部の想定以上の持久戦に生きたと評価されています。 映画で登場する地下壕は地熱も漆黒の闇もなく、内部の高さも十分で、硫黄島の壕の実相とは大きく異なりますが、果たしてランボーはどれだけの大打撃を敵に与えるのか。ご関心のある方は、ご鑑賞下さいませ。
酒井 聡平(北海道新聞記者)