アングル:米投資家、3年連続の株高に期待 懸念要因はインフレ
Lewis Krauskopf [ニューヨーク 20日 ロイター] - 米株式市場は2年連続で20%を超える上昇を記録する見通しだが、投資家の間では来年もさらに株高が進むとの期待が浮上している。 好調な国内経済を背景とする企業業績の拡大、金利低下、トランプ次期政権の景気支援策が原動力になるとの見方が背景だ。 S&P500種指数は年初から23%以上上昇。超大型ハイテク株の値上がりや人工知能(AI)に対する期待が追い風となった。 1年前に比べると、投資家は米経済に対する自信を強めている。消費者と企業は利上げを乗り切り、連邦準備理事会(FRB)は期待されていたほどのペースではないが利下げを進めている。LSEG・IBESによると、来年のS&P500種指数採用企業の利益は14%増加する見通しだ。 一方、インフレはなお根強く、大手金融機関はFRBが利下げサイクルを修正するリスクを警戒している。特にトランプ次期大統領が輸入品に追加関税を課せば、消費者物価の上昇を招く可能性が高まる。株価のバリュエーションは約3年ぶりの高水準にあり、市場が混乱するリスクは高まっている。 ナティクシス・インベストメント・マネージャーズのポートフォリオストラテジスト、ギャレット・メルソン氏は「足元ではアニマルスピリッツが幅を利かせており、来年にかけては少し制御が必要になるかもしれない」としながらも、来年は10%前後の株価上昇を期待できるとの見方を示した。 大手金融機関の多くは来年の株高を予想。S&P500種指数の年末目標は6000─7000と、直近の5900前後を上回っている。 トゥルーイスト・アドバイザリー・サービスのキース・ラーナー共同最高投資責任者によると、現在の強気相場は2022年10月に始まったが、これまでの持続期間は過去10回の強気相場平均の半分にも達していない。 また、S&P500種指数は現在の強気相場で約64%上昇しているが、過去の強気相場の上昇率の中央値である108%、平均値の184%には届いていないという。 カーソン・グループのチーフ市場ストラテジスト、ライアン・デトリック氏によると、1950年以降のデータでは、S&P500種指数が2年連続で20%上昇したケースが8回あるが、翌年の同指数は平均で12.3%上昇している。 ナティクシス・インベストメント・マネージャーズが最近実施した調査によると、機関投資家の73%は米国は来年、景気後退を回避できると予想。1年前は62%が翌年の景気後退を予測していた。 経済指標の発表値と事前予想の乖離度を示すシティグループのエコノミックサプライズ指数もプラスを維持しており、これも明るい兆候となっている。 さらに、トランプ氏は経済成長を下支えする減税や規制緩和を進めるとみられている。 ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのシニアグローバル市場ストラテジスト、サミール・サマナ氏は「今年はかなり良い状態で年を終えつつあり、来年もある程度の再加速があると考えている。市場は経済を先取りする傾向があるため、早めに経済の再加速に向けたポジションを構築するだろう」と述べた。 だが、LSEGによると、S&P500種指数の12カ月先予想株価収益率(PER)は約22倍と、長期平均の15.8倍を大きく上回っている。今月初めに記録した21年初頭以来の高水準である22.6倍からそう遠くない水準にある。 投資家はバリュエーションが長期間高止まりする可能性があり、必ずしもすぐに低下するわけではないと主張している。ただバリュエーションが高いだけに、失望を招く材料が出れば市場が動揺するリスクも高まる。 リスク要因には、トランプ氏の政策の不透明感がある。アナリストは中国などに対する追加関税が企業業績に悪影響を及ぼす恐れがあると指摘している。 関税の引き上げはインフレの進行にもつながり得る。これも投資家の懸念要因だ。11月の消費者物価指数(CPI)は前年比2.7%上昇だった。 グレンメードの投資戦略担当バイスプレジデント、マイケル・レイノルズ氏は「金利をどこまで低く抑えられるかは、インフレをどれだけ抑制できるかに左右される。インフレ率が3%台で落ち着けば、FRBは来年、それほど積極的な措置は講じないだろう」と述べた。 グレンメードは、株式を含むポートフォリオ全体のリスクについて投資家に中立的な姿勢を取ることを推奨している。 レイノルズ氏は「投資家は慎重ながらも楽観的になるべきだ」とし、「米国経済には拡大局面後期の兆候が見られ、バリュエーションはかなり高い」と述べた。