スニーカーブーム終焉で売上不調のナイキ、それでも日本でだけ好調な理由とは?「みんなと同じがいい」「でもそれだけじゃイヤ」
ナイキの定番が「一番ちょうどいい」
ただ、現代の日本の消費者たちは、ひと昔前よりも個人としての「自分らしさ」を求めるニーズも持つように変化してきている。日本でも多様性を認めようとする文化が広がり始めており、その影響で文化的自己観に変化が生じているためだ。その結果、「みんなと同じ」のニーズと、「自分らしさ」のニーズという二種類の欲求が持たれるようになってきている。 だからこそ、定番スニーカーの限定モデルが欲しくてたまらなくなる。 定番シリーズという部分は「みんなと同じ」を求める気持ちを満足させてくれ、さらに限定の色やデザイン、抽選でしか手に入らないといった希少価値のあるコラボスニーカーが「自分らしさ」を求める気持ちを満たすのだ。 みんなが認める定番人気で、その上で少しの自分らしさを持てる限定モデルというのが、現代の日本の消費者にとって「一番ちょうどいい」のである 機能性がハッキリしている自動車や家電と違い、スニーカーのようなファッションアイテムの「オシャレ」「センスが良い」「かっこいい」は基準があやふやなものだ。 それゆえに「みんなと同じ」を求めやすくなるが、ただ「みんなと同じ」だけでは満足できない、というわがままな本音が確かにある。 ナイキは日本の消費者が持つ本音のニーズを、数量限定の特別モデルのスニーカーを毎週に近いハイペースで発売することによって、満たし続けているのだ。 文/永井竜之介 写真/Shutterstock
永井竜之介
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