敵対国の記者が「自由の国」アメリカで取材するとき 【ワシントン報告㉑外国人の取材活動】
アメリカのガーランド司法長官は「アメリカ国内のメディアを使ってひそかに宣伝活動を試みる行為は断じて容認できない」と語った。2016年米大統領選ではロシアがサイバー攻撃を通じて介入したとアメリカ政府は見ている。2024年11月の大統領選本選を前にロシアの動きに神経をとがらせている。 ▽「敵国」日本の記者にも疑いの目 今でこそ日本人の取材活動は自由だが、日米関係が緊迫した太平洋戦争前は違った。 アメリカの作家スティーブン・ウスディン氏は著書「ビューロー・オブ・スパイ」で同盟通信(共同通信社、時事通信社の前身)の加藤萬寿男・ワシントン特派員を取り上げ「アメリカの基準から言って、日本人記者の取材とスパイ活動は一体化していた」と指摘した。アメリカ人記者団の間では当時、加藤が実際には海軍士官なのに新聞記者を装って情報収集に当たっているとのうわさも広がっていた。 ▽アメリカの記者証発給基準は 加藤が戦後、太平洋戦争を回顧して出版した英文の著書「ザ・ロスト・ウォー」を読むと、特派員として精力を傾けた中心は情報収集よりも、日米開戦の回避に向けた努力にあり、考えの重なる野村吉三郎駐米大使との密な連絡と行動を詳述している。「戦争は回避できるという自分の考えを進めるためなら、特派員の役割を超えることにためらいはなかった」と振り返っている。
外国人への記者証発給の基準などを国務省のフォーリン・プレス・センターに尋ねたが、取材は断られた。敏感なテーマなのだろう。