【証券会社で相次ぐ不祥事】「顧客にとって証券マンの存在がリスクになる可能性」手数料が高い商品を売り込まれる懸念、投資を一任するラップ口座も要注意
新NISA(少額投資非課税制度)ブームにより資産運用への関心がこれまでになく高まっている。そうしたなか、証券業界の信頼が揺らぐ不祥事が相次いでいる。【前後編の前編】
10月30日、証券会社のガリバーである野村證券の広島支店元社員が今年7月に顧客の80代夫婦宅で睡眠作用のある薬物を飲ませて、現金約2600万円を盗んで放火した疑いで逮捕された(11月に強盗殺人未遂と現住建造物等放火の罪で起訴)。逮捕翌日の10月31日には、同社が国債の先物取引における相場操縦問題で課徴金2176万円を納付したと発表した。 ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏(ファイナンシャルリサーチ代表)が指摘する。 「三菱UFJ銀行の元行員が貸金庫から顧客の資産を盗んだ件も含め、金融機関全般にそうした事件が相次いでいるのは、モラルハザードの問題だと懸念される。チェック機能が働かず、これが氷山の一角という可能性もある。日本人はとかく性善説をとりがちですが、こうした事件が表面化した以上、虎の子の資産を預ける先について改めて自分の頭で考える必要があると言えるでしょう」
手数料が高いほうへ
パソコンやスマホの操作が不得手な人の場合、対面で相談できる窓口のある大手証券会社は安心感が高かった。しかし、信頼のおけると思っていた証券マンが事件を繰り返している現実がある。 「流石に凶悪犯罪に及ぶのは例外中の例外と思いますが、顧客にとって証券マンの存在がリスクになる可能性は否定しがたいでしょう」と元証券マンが明かす。 「かつては厳しいノルマに追われ、顧客の資産を次々と回転売買させることが問題視されました。ただ、今はノルマはほぼない。とはいえ、社員の評価基準のひとつとして、いかに顧客から手数料を取ってくるかはどうしても含まれる。それがノルマではないとしても、出世のスピードが違ってくる現実もあるでしょう」 顧客の資産形成は後回しで、少しでも手数料が高い商品を売り込まれる懸念があるというのだ。 「たとえば、複雑なデリバティブ(金融派生商品)を組み込んだ『仕組債』などは明らかに初心者向けではないのに、手数料が4~5%も取れるので、証券会社などで無理な販売が横行した。運用次第で受け取り額が変わる『変額年金保険』も手数料が5%のものがあり、最初にそれだけの手数料が引かれてしまうと大きく増えにくい」(同前) 本来、そのような商品は金融商品取引法によって投資経験の乏しい人を勧誘してはならないため、違反した金融機関が業務改善命令を受けたケースもある。