人生初のサヨナラ生還「落とすかもしれない」 中京大中京・前田 センバツ交流試合
◇前田識人(しきと)右翼手(中京大中京・3年) 2020年甲子園高校野球交流試合第3日は12日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場であり、中京大中京(愛知)が延長十回タイブレークの末、智弁学園(奈良)に4―3でサヨナラ勝ちした。 【智弁学園VS中京大中京 熱戦の様子を写真特集で】 同点の延長十回無死満塁、三塁走者の前田は飛球を追う二塁手を凝視していた。「バックする脚がずっと動いている。もしかしたら落とすかもしれない」。三塁ベースに足を乗せつつ、万一に備えて本塁方向に体重をかけた。捕球しかけた二塁手のグラブからボールがこぼれるのを見ると猛然とスタート。「人生初」のサヨナラのホームに間一髪、滑り込んだ。強打が売りの外野手で「走塁は得意じゃない」が、土壇場での観察眼が光り、好判断につながった。 インフィールドフライが宣告されていた。打者はアウトになるがプレーは継続となるため、二塁手が落球するか、捕球されても体勢が悪ければタッチアップも狙える場面。十回の守りから入ったばかりだったが、落ち着いていた。 尊敬する人物は「命のビザ」で知られる外交官の杉原千畝。第二次世界大戦中にユダヤ人難民を助けた偉人のように、冷静な判断で好機をつぶしかけたチームを救った。【石川裕士】