「台湾で日本兵が神となった訳」"おばけの人類学" 知らないことばかりの教養講座
■多様な文化を知る面白さ 沖縄のノロ、青森・恐山のイタコのように、霊が憑依するシャーマンが台湾にもいます。シャーマンが祈りで日本神を降臨させる風習も台湾にはあるそうです。なかには宝くじの当たり番号を事前に教えてくれることもあるといいます。米軍と交戦中に死亡した零戦パイロットは「集落への墜落を避けようと、機体からの脱出を遅らせた」と言われているんですが…。墜ちる寸前のパイロットの心境って、誰にも分からないですよね。これも、シャーマンによるお告げだそうです。 藤野陽平教授:インターネットで「台湾・神様・日本人」とかいっぱい出てくるわけですね。「台湾は親日で、日本人が神様になっているから、植民地経営は正しかったんだ」という描き方がされます。そういうロジックの時に、日本人の神様が出てきます。こういう廟を巡って「台湾は親日なんだ」と思って帰ってくる観光が行われています。まあ、結論から言うと「そうじゃないんだよ」という話をしたいと思います。 藤野陽平教授:台湾に「日本に対して友好的な人が多い」というのは事実。私は20数年通っていますが、間違っていないと思います。ただ僕は、「台湾は親日か」と言われると「そうじゃないんじゃないかな…」と思っています。と言うのは、台湾人は外国人に優しいんですよね。僕に対してもすごく親切にしてくれるのですが、僕以外のアメリカ人とか韓国人とかいろんな人にも同じように親切にしているんです。日本に対しても友好的だけど、外国人とかお客さんに対して親切にするのが台湾人なんじゃないかなと僕は思っています。日本神は、親日・反日というベクトルとはちょっと違う軸で起きている現象ですよ、とご理解いただけたら。 きちんとした調査と研究から、多様な文化の姿を知るのは、面白いですね。藤野先生は、台湾の日本神を映像で撮影して、『軍服を着たカミサマ台湾の日本神信仰』というドキュメンタリー映画を制作中だそうで、完成が楽しみです。「ふくおか自由学校」の講座、本当に勉強になりました。