「肥後にわか」キンキラ陽子さんが熊本弁道場…薄れゆく方言「良さが見直さるっ時の来っとじゃなかかな」
伝統工芸品や建造物といった形あるものだけでなく、地域特有の「方言」も守りたい。即興劇「肥後にわか」の役者・キンキラ陽子さん(80)は、時代とともに熊本弁がことに危機感を抱く。熊本弁を教える講座を通じて、にわかならではのテンポで面白おかしく文化をつなぐ。 【写真】洗馬橋電停に設置されたタヌキ像
うすとろか・うじゃける・うしわくど
「『う』から始まる言葉を勉強します。意外と言いづらかとの多かとですよ」。着物姿の陽子さんが軽妙なしゃべりで、「うすとろか、うじゃける、うしわくど……」と次々に受講生に紹介した。昨年12月上旬、熊本市内であった「熊本弁道場」での一場面だ。
それぞれ熊本弁で「恥ずかしい、ただれる、大きいカエル」といった意味だ。「~たい」「~っと」に代表される語尾やアクセント、「あとぜき(開けたら閉める)」「がまだす(頑張る)」など一部を除き、語彙を日常で聞くことはほとんどないだろう。 方言だからこそ伝わる笑い、若者に意味が伝わらないことも
陽子さんは1944年、荒尾市で三姉妹の次女として生まれた。両親も肥後にわかの役者で、10歳頃に初舞台を踏み、15年ほど前から熊本市を拠点に活動する「キンキラ劇団」の団長を務める。
肥後にわかは、熊本弁たっぷりの軽妙な語り口、場に合わせた即興のかけ合いが魅力の芝居だ。方言だからこそ伝わる笑いだが、陽子さんは「若者がどんどん熊本弁を理解できなくなっている。にわかを見に来てくれても、意味が伝わらないことがある」と感じるようになった。
それぞれの風土で育まれた言葉のニュアンスがあり、わかる者同士だからこそ一体感を共有できる。熊本弁に限らず、それが方言の良さだ。例えば「あがんなっせ」は、「(家に)上がってください」と「(食べ物を)召し上がってください」という意味で使い分けるが、「熊本弁がわからないと、その場で困ってしまうでしょ」と陽子さんは笑う。
笑いの絶えない空間で受講
昨年9月に始めた講座は女性5人が受講している。毎月2回、面白おかしく寸劇を交えながら、笑いの絶えない空間で熊本弁を学ぶ。