『西園寺さんは家事をしない』松本若菜の恋に暗雲が立ち込める 苦しく切実な倉田瑛茉の涙
楠見俊直(松村北斗/SixTONES)に対して突然芽生えた恋心のようなものに戸惑う西園寺一妃(松本若菜)が、時を同じくしてルカ(倉田瑛茉)の誕生日会開催の準備に奔走する『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)第4話。 【写真】横井(津田健次郎)と話す天野(藤井隆)と楠見(松村北斗) 保育園で友達から“偽家族”は変だと言われ喧嘩してしまったルカは、すっかり元気がない。そこで、西園寺家にゲストを招き、少しでも自分たちのスタイルを知ってもらおうという西園寺さんだからこそ思いついた前向きな試みかに思えた誕生日会。しかし、実際には「うちは普通じゃないんだから普通以上じゃないと」という負い目を抱えた西園寺さんが、全ての準備を1人で担おうとし、苦手な料理に四苦八苦、パンク寸前になってしまう。 その姿はシングルファーザーであることをひた隠しにして、周囲に迷惑をかけないようにと全てを抱え込もうとしていた少し前の楠見と重なる。「やらなければいけないをやらなくていい」を西園寺さんから教えてもらえた楠見が会社のメンバーにルカの存在を明かすことができた頃、今度は西園寺さんがそのトラップにはまってしまうのが皮肉でまたリアルだ。 誕生日会の準備について「やりたいではなくやらなければいけないになっていないか」と楠見から問われた西園寺さんだが、初めて料理も家事もやりたいと思ったという西園寺さんは、自身の母親も自己犠牲の上に我慢ばかりしていたわけではないことに気づき始めているのではないだろうか。“やりたいからやっていた”ことでも、一人で抱え込みすぎると、いつの間にか“やらなければいけない”に変わってしまうことだってある危うさを孕んでいるのだ。 そして“偽家族”まではいかなくとも、どの家族もフォーマット通りではなく、それぞれの事情を抱えていることに改めて気付かされる。旦那の連れ子で自分とは血の繋がりがなかったり、同性パートナーだったり、妻が単身赴任中で夫が実家暮らしのジジババフル回転家族だったり。このルカの誕生日会をきっかけにそんな保護者同士の繋がりができた。“完璧に仕上がった綻び一つない誕生日会”に招待したりされたりするのではなく、ゲストもみんなで料理を持ち寄って一緒に補い合いながら作り上げていくスタイルの誕生日会に自然と形を変えていくことが頼もしい。 普通ではないことに引け目を感じて必要以上に頑張ってしまおうとするところは西園寺さんと楠見の共通点でもあるが、それを彼は「少し家族というものに対して臆病」だと表現した。そんな2人だからこそ形式以上に「子どもを大事にさえしていればそれでいい」という他の保護者からの言葉は、何よりのプレゼントになったのではないだろうか。一見突拍子もないように思える、“偽家族”という彼らなりの試行錯誤を肯定されたような気がしたことだろう。 ゲストの家族も心から楽しんでくれている誕生日会で、ルカは喧嘩をしていた友達との仲直りにも成功。しかし、あまりに幸せで自然なその空間に、思わず亡き母・瑠衣(松井愛莉)が元々いた場所を西園寺さんが脅かそうとしてしまっているかに思えてしまう。子どもながらに大切なものがいつの間にか塗り替えられてしまい、本当に自分の記憶の中から母親がいなくなってしまう気がしてしまったのかもしれない。 突然「西園寺さん、パパのこと好きにならないで」と泣きつくルカの姿は、誰も悪くはないのに苦しく切実だ。これが決定打となり、西園寺さんは“偽家族”継続のためには楠見に対する好意に蓋をしてしまい、「恋したら終わり」という考えをますます強固なものにしていきそうだ。 “幸せな家族”の絶頂にいたかに思えた最中にそれを突然失ってしまう経験をした3人だけに、家族に対してちょっぴり臆病になってしまった彼らは、ここからまたどんな“家族”を築いていくのだろうか。
佳香(かこ)