念願だった鹿島戦。特別な古巣相手に平戸太貴が示した成長。指揮官は「よく努力をして、今の領域までたどり着いた」と評価
「温かく迎えてくださったみなさんに感謝」
2022年までプレーした町田でも、平戸は守備の強度に優れた選手として、当時のランコ・ポポヴィッチ監督から評価されてきた。それでも、曺監督が求める水準はまた、性質が異なるという。 「極論を言えば、抜かれても良いから全部行き切るように言われてきましたし、相手の懐に入っていくことは口酸っぱく言われてきました。自分のプレースタイル的にボールを奪うプレーは今までなかなかできていなかったですが、トライし続けた結果、試合で使ってもらえるようになりました。チームで求められる強度を発揮したうえで自分の特長を出せるようになってきたのも、サンガタウンでの日々の取り組みや、腐らずにやり続けた結果が今に繋がっています」 象徴的なシーンは21分。果敢にボールホルダーへアプローチした結果、後方の味方がインターセプトできる状況を創出し、カウンターの発動に繋げた。最終的にオフサイドを取られたため、結果には繋がらなかったが、身体に染み付いていることを忠実に実践できた場面だ。平戸は言う。 「たとえ自分がボールを奪えなくても、ファーストディフェンダーとしてボールを奪いに行くつもりで行っています。その後のプレーの制限に繋がることで、チームとしてボールを奪いやすくなりますから」 攻守に奮闘した平戸は試合後、0-0で勝ち切れなかった悔しさを募らせながら、鹿島サポーターが陣取るアウェーのゴール裏まで挨拶に向かった。 「鹿島サポーターのみなさんがいる景色は久しぶりのことです。温かく迎えてくださったみなさんに感謝していますし、また頑張ろうと思いました」 本人が「J1でやれる自信がついた」と語る24年シーズンもあと2試合。2週間後の次節は、「前半戦(0-3)の借りを返す」町田との古巣戦だ。 取材・文●郡司聡(スポーツライター)