孤立想定集落に「スターリンク」配備へ 能登自治体、初期の通信確保で 能登地震1年
今年の元日の能登半島地震や9月の豪雨で孤立集落が多く発生した石川県の被災自治体が、人工衛星網による高速通信サービス「スターリンク」の機器を避難所などに常時配備する計画を進めていることが30日、分かった。 【能登半島地震1年】写真で比較する被災地の今 大量の情報を多数の人が同時にやりとりでき、災害初期の通信確保に有効と判断した。 スターリンクは数千基の低軌道衛星を用い、通信環境が整備されていない地域でも高速インターネット通信を可能にする。比較的新しいサービスで、災害支援としては能登半島地震で初めて本格活用された。 珠洲市は市内に26ある指定避難所や各地区の集会所などから必要箇所を洗い出し、来年4月以降に専用のアンテナと充電用の発電機、ソーラーパネルを常備する方向。輪島市も地震と豪雨で2度孤立した町野、南志見、七浦の3地区の公民館への配備を決め、11月の補正予算で3台分の約150万円を確保した。 県などによると、1月の地震では孤立集落が最大24地区、豪雨では16地区発生。土砂崩れなどによる通信障害が長引き、地震では携帯電話の応急復旧が全地区で完了するまでおおむね2週間以上を要した。 地震発生当初、孤立集落には既存の衛星電話も供給されたが、山間部で電波が届きにくいなどの難点があったという。孤立が長期化した珠洲市大谷地区の避難所には1月12日にヘリコプターでスターリンクが到着。丸山忠次区長会長は「非常に助かった。安否確認のために真っ先に必要で、指定避難所には最低限置いておくべきだ」と語る。 今回の災害で学校や避難所にスターリンク機器を設置したソフトバンクの関係者は「避難所という非日常の中でも、子どもたちが動画を見たりゲームをしたりして日常を楽しんでいた」と話す。 能登半島地震を受け、東京都が島しょ部を含む全市区町村にスターリンクを配備するなど、各地の自治体にも活用が広がる。ただ、マニュアルを読むだけでは、いざという時に活用できない恐れもあり、ソフトバンク公共事業推進本部の橋詰洋樹さんは「市民にスターリンクを開放したイベントを開くなど、普段から使えるようにしておくことが大事だ」と指摘している。