「ゴシップガール」のブレア的な相手を懐柔するには 鈴木涼美が勧める「敵と寝る」戦法で人間関係を解毒
■疎まれたから、距離を詰めてみた 昔、短期間だけ働いていた場所で、私が入るまでそのコミュニティでは紅一点だっただけに、絶対ちやほやされていたであろう先輩がいたことがあります。私よりずっと綺麗な人でしたが、すでに結婚して子供もいたため、徐々に職場内で若い私を華として扱うような空気感が生まれ、そのせいで彼女のほうはそれまで受けていた優遇が弱まるように感じていたかもしれません。今から思えば周囲のおっさんの勝手な値付けで女同士の関係性が変わってしまうのは愚かなことですが、ある時を境に彼女から露骨に苛立った態度をとられたり、私と他の男のまったく身に覚えのない関係を密告されたりするようになりました。 なんとなく、じんわりわかるような疎まれ方だったので、はっきり口論するきっかけもつかめない私は、彼女のさりげない嫌がらせに気づかないふりをして、がんがん距離を詰めてみることにしました。仕事終わりに買い物に誘ったり、友達いないのでランチしてくださいーと甘えたり、ありもしない恋の悩みをでっちあげて長々と相談したり、彼女の得意分野や詳しいジャンルのことをものすごく興味のある感じで質問しまくったりしているうちに、彼女のほうも、割と可愛がってくれるようになりました。彼女が私の位置づけを、大して可愛くもないのにちやほやされているいけ好かない後輩から、異様に自分のことを慕っている憎めないヤツ、くらいに昇格させてくれたのかもしれません。
■人は、自分のことを好きな人に弱い これは別に、キリスト教的に敵も愛しなさいとか、自分を嫌いな隣人でも愛しなさいみたいな高尚な思想を下敷きにしているわけでもなければ、卑屈になって下手に出ているわけでもありません。ただ人は、自分に極端に懐いてくる人、自分に憧れていそうな人、自分のことをめっちゃ好きそうな人には弱いものです。私なんかチョロいので、たとえ死ぬほど嫉妬するような美貌と才能を持ついけ好かない後輩がいたとしても、「ファンです」とか「学生時代から鈴木さんの本読んでます」とか言われたら二秒で大好きになります。 そのお姉さん二人がどんな理由で急に態度が変わったのか、気に入っていた男性があなたのことを好きだとかそういう恋愛系のことなのか、何かあなたが言ったことやSNSの投稿などが気に障ったのか、それはよくわかりません。聞いてもなかなか教えてくれないでしょうが、正当な理由があって怒っている時には人は根も葉もない噂とかはたてませんから、きっとくだらない嫉妬心とかイライラとかそういうものが理由だと思います。そんな理由で嫌がらせをしている人に慈悲の心を持つ必要はないのですが、自分が快適に暮らすためにここはひとつ、敵と寝る戦法はいかがですか。人は束になると嫌悪感や嗜虐心を増幅させますから、二人いっぺんではなくどちらか一方ずつターゲットを絞って思いっきり近づいてみると、彼女たちの不安や闇も見えてくるかもしれません。 【鈴木涼美さんへのお悩みを募集中!】 連載「涼美ネエサンの(特に役に立たない)オンナのお悩み道場」では、恋愛、夫婦、家族、仕事、友人など、鈴木さんと同世代の30~40代女性を中心に、お悩みを募集しています。ご応募はこちらのフォーム(https://forms.gle/vH3KMGRGBPJb2TE5A)から! ●鈴木さんからのメッセージ 私はずっと地べたにはいつくばって生きている感じなので、こんな風にすれば素敵な人生送れるよ!というアドバイスは何もないですが、ピンチに陥ったり崖っぷちに立ったりすることは多い日々だったので、痛み分けする気分で、気負わずなんでもお便りお待ちしてます。
鈴木涼美