「不当要求には毅然と」 栃木県内企業で「カスハラ」対策進む マニュアルに具体例や映像で研修
客からの暴言や悪質なクレームなどの迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が社会問題化する中、栃木県内企業でもマニュアルの作成など対策が進められている。客の度を超した要求に社員が疲弊し退職を申し出るケースもあり、マニュアルでは社員を守るため警察に通報することも想定。企業担当者は「不当な要求には毅然(きぜん)とした対応が必要」と口をそろえる。小売り2社の現場を取材した。 「人格を否定する発言をされており、これ以上乱暴な発言をされるならお客さまとして対応できません」 福田屋百貨店(宇都宮市戸祭元町、福田宏一(ふくだこういち)社長)の対策マニュアルには、カスハラを受けた際に社員が取るべき言動を過去の事例を交えて具体的に記載している。 厚生労働省が策定したマニュアルを参考に、2022年に策定した。40ページ超に上り、カスハラの定義や社内の連絡体制、客への対応策などが細かく記載されている。社内研修も実施し、担当者から全社員に内容を説明した。 同社では、以前からカスハラの対応に苦慮していたという。接客でささいな不手際があった際に、過剰なサービスや謝罪を要求されたり、人格を否定する発言を受けたりすることがあり、社員が疲弊し退職を申し出るケースもあった。 このため現場だけに任せるのではなく、会社として対応しようとマニュアルを作った。保坂広行(ほさかひろゆき)インターパーク店お客様相談室長は「お客さまにしっかり説明して納得してもらうことが大前提だが、ハラスメントを受けた場合は毅然とした対応を取ることが大切」と話す。 「顧客の要求が合理的か不当かを見極めることが重要」と説明するのは、ホームセンターのカンセキ(宇都宮市西川田本町3丁目、大田垣一郎(おおたがきいちろう)社長)の総務人事部担当者。19年に同社の弁護士と策定したマニュアルにも見極め方を盛り込んだ。 客の要求が合理的だったり、同社に過失があったりした場合は誠意を持って対応すると記載した。一方、どう喝や脅迫、強制性がある場合は、記録を取るなどして警察に通報するケースも想定している。 今月中に実施する社内研修では、外部の映像教材を使って社員がカスハラについて学ぶ機会を設けるといい、担当者は「従業員には1人ではないことを説明し、1人で抱え込ませないようにしたい」と強調した。