人口減の原因は土地不足!? 静岡市が新法人で未利用地〝開拓〟 企業誘致で若者つなぎ止め 深層リポート
令和2年には約69万3千人だった人口が32年には約49万2千人にまで減少するとの試算がある静岡市が若者流出を抑え、人口減に歯止めをかける一手として未利用地の活用に乗り出した。若者の働く先として魅力的な企業を誘致しようにも、駿河湾と南アルプスに連なる山間地に挟まれた静岡市には未開発の用地が極端に少ないことがネックだった。その処方箋として、市自ら法人を立ち上げて未利用地の集約、所有者と企業の橋渡しに取り組み、企業立地を促していく。 【日本地図で見る】秋田など11県、2050年に人口30%超減 地域別推計公表 ■「土地が用意できていない」 「企業の進出や規模拡大に対する意欲はあるが、土地が用意できていない。若年層が流出しており、魅力的な働く場を生み出したい」。難波喬司市長は6月の定例記者会見で一般社団法人「静岡市土地等利活用推進公社」の設立を発表し、こう意気込みを語った。 企業誘致に向けて着目したのは、令和2年時点で計5000ヘクタール程度あるとされる耕作放棄の未使用農地。市内に点在し、その周囲には同様の未使用農地や小さな営農地があることが珍しくないため、公社は未利用地、農地をそれぞれ集約して一定規模の企業用地、農地に〝再編〟させられるように土地所有者間の売買の斡旋(あっせん)などを行う。そして、企業用地の情報は進出を希望する企業などに提供する。 働き口だけでなく、若者が住みやすい環境づくりにも取り組む。空き家の所有者を対象にした相談窓口を設置して入居可能な空き家情報を集め、不動産業者、入居希望者との橋渡しをする。入居がスムーズにいくように公社が所有者から借り上げるマスターリース契約を結び、入居者に転貸するサブリースを実施していく。 農地に限らず総合的に土地、空き家も含めた総合的な利活用を進める法人の設立は全国的にみても珍しいという。 ■業務開始を前倒し 当初は来年4月の設立を目指したが、1日でも早く着手する必要があるとして前倒しし、今年9月2日に業務を開始した。市の浮沈は土地の創出にかかっており、そのためには未利用地の利活用しかない、という危機感がうかがえる。 確かに、静岡市は安穏としてはいられない。工業分野の令和4年の立地件数が県全体の52件に対して市は4件にとどまる。5年も県47件、市6件で「市の人口の規模やシェアからすると大幅に少ない」(市関係者)。