平気なフリばかり、上手くなる29歳。ダメでもムダでも、伝える勇気 『9ボーダー』8話
19歳・29歳・39歳。節目の年齢を目前にした三姉妹が「LOVE」「LIFE」「LIMIT」の「3L」について悩み、葛藤し、それぞれの答えを見つける過程を描くヒューマンラブストーリー『9ボーダー』(TBS系)。第8話では、記憶喪失であるコウタロウ(松下洸平)の過去が、ついに明かされた。 【イラストで見る】ドラマ『9ボーダー』
「ボーダー上」で心揺れるコウタロウ
コウタロウ(松下)の過去が明らかになった。大庭家の三女・八海(畑芽育)がSNSに投稿した誕生日会の動画をきっかけに、弟であるという人物が名乗り出てきたのだ。 コウタロウは、本名・芝田悠斗。不動産会社の副社長で、おおば湯がある市街地の再開発プロジェクトを推進する立場にあった。記憶をなくした当日、商店街にいたのは、計画に一番反対していた自治会長に会う約束をしていたためだった。 仕事が生きがいだったというコウタロウは、再開発プロジェクトにも懸命に向き合っていたのだろう。あの日、橋の階段で彼にけがを負わせた自治会長の話によれば、住民の意見を聞き、町の発展にも貢献しようとしていた。 神戸出身だというコウタロウの元へ、弟の代わりに、婚約者を名乗る酒井百合子(大政絢)がやってくる。彼女と会って話しても、コウタロウの記憶がよみがえることはなかったが、彼女がいつも飲んでいたのか、紅茶の銘柄・オレンジペコのことは覚えているようだ。 次々と明らかになるコウタロウの過去。持っていた謎の大金は、祖父から受け継いだ遺産であること。弟・芝田尚希(中山翔貴)はオーケストラでチェロを演奏していること。仕事人間の彼でも、婚約者に対して土産を買うことを欠かさず、ウェディングドレス姿に「綺麗(きれい)だ」と伝える優しさがあること。 記憶がスッポリと抜け落ちるだけで、こうも人柄が変わってしまうのか、と違和感が芽生えるほどだが、コウタロウ自身の根っこにある優しい気質は、変わっていないのかもしれない。 その人らしさを形づくるものは、過去なのか。経験なのか。それらに基づく記憶なのか。それとも、今なのか。元の自分と、新しく重ねてきた「コウタロウ」としての自分のあいだで、揺れ動く心。松嶋朔(井之脇海)が言うように、コウタロウも、ある種「ボーダー上」にいる。