保護者の学校への相談・苦情「民間事業者が対応します」…教員の負担軽減へモデル事業
文部科学省は、保護者から学校への問い合わせについて、民間事業者が一括して受け付けるモデル事業を実施する。保護者からの相談や苦情への対応が教員の負担となっていることを踏まえたもので、まず外部の窓口で連絡を受けることで負担を軽減し、教員が子どもに向き合う時間を確保する狙いがある。 【図解】保護者の相談を民間事業者が受け付けるイメージ
同省はモデル事業を通じ、導入する効果や課題を検証し、全国に同様の取り組みを広げたい考えだ。年内に実施する事業者を公募で選定し、約6000万円で委託する。複数の小中学校を対象とし、保護者から電話やチャットで連絡を受け、内容に応じて直接回答したり、教育委員会や学校につないだりすることを想定している。
事業者が内容を整理して学校に伝えることで、教員が最初から対応するより、要する時間を短縮することが可能となる。例えば、学用品などの費用を市区町村が補助する「就学援助制度」に関する質問であれば、教育委員会から回答し、学校の対応は不要になる。
学校では、学級担任の教員が授業や部活動で職員室におらず、保護者が電話で問い合わせてもすぐに対応できないケースも多い。インターネットのチャットも活用することで、保護者側にとっても何度も電話する手間を省ける利点がある。
自治体によっては、すでに市役所などでの窓口対応を民間事業者に委託している例もある。文科省はモデル事業を委託する際に、相談内容などが外部に漏えいしないよう個人情報の保護を徹底する。
教員の長時間労働は常態化している。同省が2022年度に実施した調査によると、月平均の残業時間は小学校で41時間、中学校で58時間だった。公立学校の教職員が加入する公立学校共済組合が16~22年度に行った調査結果を分析したところ、ストレスの要因として「保護者対応」を挙げる回答は増加傾向にあり、22年度は12・4%に上った。