シンガポール、ファミリーオフィスとヘッジファンドの精査を強化
(ブルームバーグ): シンガポール当局は、相次ぐ不祥事で監督体制の不備が浮き彫りになったことを受け、ファミリーオフィスやヘッジファンドにさらなる情報提供を求めるとともに、休眠会社の閉鎖を進めている。
事情に詳しい関係者によると、政府は3月以降、さまざまな投資規制を強化する動きを加速させており、数カ月以内に満たすべき追加要件を定めたり、活動を停止している企業の閉鎖を加速させたりしている。
免税措置を受けているファミリーオフィスは5月、より詳細な情報を求める新しい書式を受け取り、6月末までに情報を提出するよう指示された。
シンガポール通貨庁(MAS、中央銀行)は3月、2億5000万ドル(約390億円)までの資産を持つヘッジファンドが利用していた登録制度を8月1日までに廃止し、より厳格な報告義務を課す制度に移行することを確認した。
一連の刑事事件で外国から流入する富を取り締まることの難しさが浮き彫りになったことから、シンガポール当局は金融機関の監視を強化している。最近起きた30億シンガポール・ドル(約3500億円)のマネーロンダリング(資金洗浄)事件の被告人のうち少なくとも1人は、非課税を認められたファミリーオフィスに関係していた。
シンガポール経営大学(SMU)のリチャード・クロウリー准教授(会計学)は、「より多くの、そして理想的にはより多様なデータを持つことは、望ましくない活動を早期に発見できる可能性を高め、違法行為が引き起こすかもしれない経済的影響や評判の損失を最小限に抑えるのに役立つ」と述べた。
非課税のファミリーオフィスがMASに提出しなければならない年次申告書の書式によると、ファミリーオフィスは 実質的支配者、取締役、代表者、株主がマネーロンダリングやテロ資金供与の犯罪を犯したことがなく、有罪判決を受けたこともなければ、起訴されたこともないことを確認しなければならない。
また、運用資産が国内の資本規制を順守していること、ファンド運用会社が世界のいかなる当局からも規制措置を受けていないことも確認しなければならない。